先月、初めて衆議院予算委員会で質問する機会をいただきました。
テーマが「G7広島サミット」だったので、その成果を中心に質問しましたが、一問だけサミットとは関係のない、「身寄りのない高齢者等に関わる現場の負担感の大きい課題」に触れたところ、多方面から反響をいただきました。「見寄りのない」と言っても、裕福な人にも起こりえる課題なのです。
■ 希薄になった人間関係
元々この課題については、鈴木太郎横浜市会議員から『YOKOHAMAリビングラボ』でも本格的に議論を始めたということで紹介がありました。そして当事者の一人として何年も関わってきた方からお話を伺ったところ、問題の根の深さ、広さそして深刻さがわかり、すぐに対応するべきだと直感しました。
高齢ともなると少しずつ他人の力を借りたい事象が出てきますが、それを頼める人間関係が希薄になってきている人が増えており、病気や事故などで様々な支援が必要となった時、行政の対応がなされていないのです。
■ 活用しにくい「後見人制度」
「判断はしっかりとできるが、実際に動けず、日常生活支援だけを求める」という場合と、「一人で判断・決断をするのも困難で、意思決定支援までも必要」という場合があるようです。
この「正常な判断ができるかどうか」が一つのポイントで、もし認知症が進み、自分で判断ができないと判定されると、その後一切の契約などができなくなります。つまり、原則論だけを突き詰めれば、施設などにも入居できないということになります。
そのために後見人制度がありますが、後見人を指定するのに裁判所を通すため、手間とお金がかかり、多額の遺産が絡む時くらいしか活用されていないそうです。
■ 「職員がボランティア対応」の現状
家族がいれば、家族が当人の代わりに判断・決断をして、物事を進めることができるわけですが、家族がいないと何も新しい行動が取れなくなってしまうわけです。しかし、一方で目の前に困っている人がいればそれを放っておくわけにもいきません。
現在はそういう方々をお世話しているケアマネージャーさんや病院・施設の職員さんたちが、職務権限を越えて、無報酬のボランティアで対応しているのが実情です。しかし、ただでさえ多忙な彼らに、ボランティアでこの大変な仕事をさせるのは酷な話で、早晩、破綻するものと思われます。ですから、この部分はきっちり仕事として認定し、行政が対応することが求められると思います。
■ 家族に頼れない人々
類似の状況はいろんな環境で生まれます。実際に担当されてきた方に伺った事例では、資産家の老夫婦と息子一人の家族で、妻は認知症、息子は知的障がいで二人とも判断ができないため夫が生活、財産などを支えていたが、その大黒柱の夫が倒れたというケース、生活支援を申し出た甥っ子を信用できず、拒否した老婦人のケース、たとえ子どもがいても親の面倒を拒否するケースなど、戸籍上の家族や親族がいても頼れない・お願いできない(したくない)ことがあるということです。
■ 「身元保証人ビジネス」が栄える理由
他にも、認知症の母と二人暮らしをしていた父が入院した際に、判断できない母の代わりに娘さんが対応に苦労した話をつい先日聞きました。「入院保証金が10万円必要」「退院後の身の処し方をどうするか」「汚れ物は毎日取りに来て」という話から、「レンタルの寝間着は嫌だから、自分の物を持って来てくれ」というお父さんのわがままの対応対処まで様々な課題があったそうです。娘さんも、共働き・子育て中と多忙のなか、大変な労力です。
娘さんがいたから病院側は何でも娘さんに電話して済んだわけですが、娘さんがいなかったら病院側がリスクと負担を全部背負い込むことになります。厚労省は病院側に、入院時に「身元保証人」を求めるなと言っていますが、現場では必要としているのです。
こうしたケースが大変多く、需要もあるため、今、この身元保証人を受けることを業務の一つとする身元保証事業者が一気にその数を増やしています。しかし契約した時点から亡くなるまでの長期間を支援する契約なので、まじめに信頼に応えていこうとすると、手間や費用が掛かり、なかなかビジネスモデルが作れないと言われています。
一方で儲けるために不十分なサービス、中には詐欺まがいの業者もいるとのこと。自然発生的にできているので、所管官庁も決まっておらず、業務のガイドラインもなく、同業の団体もないのが現状です。『公益財団法人 日本ライフ協会』という同種の会社が多くの被害者を出したこともあり、現在、総務省行政評価局が実態調査を行っています。夏には結果を発表するということですが、ここも一つの論点です。
■ 誰ひとり取り残さない仕組みづくり
しかし、資産の多寡にかかわらず起きるのがこの問題です。余裕があれば前述のような会社にサービスを依頼することもできますが、その余裕がない方々も視野に入れるということになると、行政で仕組みを持たなければならないだろうと思われます。その時には社会福祉協議会の役割も併せて議論すべきです。現在も社協にはこの問題意識があり、対応もすることにはなっているようですが、予算と人手不足で機能しているとは言えないのが実情です。
また先述した後見人制度ですが、裁判所を絡めて専門家を指名してもらうのは大げさすぎて、金もかかって使いにくいので、日常生活の支援だけを対象にした新たな制度を作るかどうかも一つの論点になろうかと思います。
そして今までの法体系が、家族を基本とした立て付けとなっている点も再考が求められると考えます。以前と比べて家族のありようそのものが多様化し、今現在想定している機能を果たしきれなくなっている場合も増えています。現実に合わせた仕組みづくりが行政の関与を広げるなかで必要かと思います。
■ 現場の声が政治を動かす
予算委員会の質問では総理から「厚労省を中心に、まず実態把握や課題の整理を行い、その結果を踏まえて、政府として必要な対策を講じる」という答弁をいただいているので、内閣官房副長官補室の担当の方々に、厚労省とも連携していただき、まずは今年の『骨太の方針』で頭出しをしてもらい、そのうえで具体的な制度についての検討を急いで欲しいと思います。
そしてこの課題が決して高齢者だけのものではないことは、地元の方々からのご相談で実感しています。そのことも併せて、政策を進めていきます。
付記)現在の内政担当の官房副長官補は、私が内閣官房副長官の時に座長として、国として初めての「不育症の助成制度」を作ったときの副長官補でもあったので、予算委員会で質問する前に相談をさせてもらいました。ありがたいことに、すでにこの課題を認識し、現状把握に動いていました。
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