■ 特命チームの目的
先月、自民党情報通信戦略調査会の下に、新たに情報通信インフラ特命チームが立ち上がり、そのチームの座長を拝命しました。チームの立ち上げを野田聖子会長に私が進言した経緯もあってのことです。
このチームは情報通信インフラの現状を改めて見直した上で、必要な作業を絞り込み、そのための予算化を確実にしていくことを目的としています。ですから、今年の3~4月で集中してヒアリングと議論を進め、6月ごろに公表される予定の「骨太の方針」に、このチームで出した提言を反映させたいと考えています。
■ 特命チームを立ち上げた理由
岸田総理が推進するデジタル田園都市国家構想も、日本全国隅々にまで光ファイバー網が張り巡らされていることが前提となります。二拠点居住や地方移住も、情報通信インフラが整備されてこそのものです。
現在、99.7%の光ファイバーの世帯カバー率を持つ日本は、世界でも有数の整備状況を誇っており、未達は16万世帯と言われてきました。しかし、150万世帯以上は自治体が保有する設備であり、多くはインフラの更新時期に差し掛かっており、それらの対応が十分でないことが判明。このような状況が、このチームの立ち上げの一つの理由となりました。
■ 転ばぬ先のインフラ整備
光ファイバー整備については、地方部の新設の際は「公設民営方式」を活用して整備を進めてきました。
横浜のような都市部においては、民設(民間企業が敷設費用を当初に負担)でも、その後の営業利益により投資回収ができますが、地方の人口密度が低い地域では、初期投資を回収できません。
そこで地方では税金を投入して光ファイバーを敷設し、そのインフラを民間で活用して事業を営んでもらうことにし、サービスを提供できるようにしてきました。
しかし、道路、下水道などでもありがちですが、維持管理、そして更新費用に関しては得てして段取りが十分でない場合があります。情報通信分野でも例外ではなく、この維持費に関しては、昨年法改正を行って、全国のサービス利用者からユニバーサルサービス維持費用をいただく制度を導入し、この資金を収入の合わない部分の補填に回していく予定です。
ところが更新費用については、話し合いによって更新作業を民間企業に引き受けてもらえる地域は良いですが、現在と同じ「公設民営方式」しかないところでは、予算化が見えていないところもあります。また通信と放送で設備を共有している場合は、放送の設備の更新費用が十分ではありません。
問題が顕在化して、追い込まれてから対策をとるのではなく、今のうちから動いておいた方が良いのは自明の理です。そこで与党から政府に対し、具体的な対策案を明示することにより、関係省庁の背中を押してあげることができます。
■ 経済安全保障上重要な海底ケーブル
情報通信インフラ特命チームでは、この光ファイバーのテーマ以外にも海底ケーブルやデータセンター、そして5G、IoTなども議論の俎上に乗せたいと考えています。その後、可能であれば、宇宙空間利用に関しても広げられればと思っています。
海底ケーブルは、大陸間をつなぐ大きな役割がありますが、今後は経済安全保障の観点からも新たな注目を集めています。データを抜かれる心配のない日本の「陸揚げポイント」が注目されたり、北極海を通して直接ヨーロッパとつなぐ案などが浮上しています。
また、国際間だけでなく、国内においても沿岸部の陸揚げポイント同士でつないでいるのですが、日本海側は同様にはつながっておらず(ミッシングリンク)、そこをつなげることも求められています。
■ 後塵を拝する日本のデータセンター
データセンターに関しても、アメリカなどに大きく遅れています。
日本政府のデータに関し、クラウドを活用する場合、アメリカの企業を使うことになるため、日本でやるべきだという批判が起きました。
デジタル庁の担当責任者にヒアリングしたところ、アメリカの企業であれば大きなシステムの一部を貸し出す形になるので、依頼後2週間ほどで稼働ができる上に、新たな対応が必要になったときもその機能の追加ができるとのこと。しかも比較すると日本の企業よりも安価です。
日本の企業に頼む場合、システムを構築しなければならないので、稼働まで1年半~2年。しかも新たな機能を追加しようとすれば、また一からシステムを構築することが求められるので、実質不可能。その上、運用のノウハウの蓄積がないので、割高になってしまうそうです。
まずは今回、様々なノウハウを吸収して、近いうちに日本産のクラウドを使えるようにしたいとのことでした。この基本となるデータセンターに関しても、特命チームで検討していきたいと考えています。
■ 大きな視点からの期待値
実は今回の特命チームで期待している効果は他にもあります。その一つは、役人のみなさんの体験学習の場にしたいということです。
公務員たたきの風潮が長く続いてきたことによる様々な影響や、国会対応などのキツイ就業環境などにより、政策策定へ向けるエネルギーと時間が減少してきている気がします。審議会や与党で議論をして、次なる局面に向けてどれだけ自分の政策が磨けているか、対財務省との予算折衝の時にもどこまで幅広く(時間的にも、分野的にも、距離的にも)説明ができているのか、心許ない部分を感じています。
今回の特命チームでの活動を通して、事前に現状を把握し対応を想定しておく、しかも与党の調査会という場を活用するという方法もあるのだということを知ってもらいたいのです。
役所の政策立案能力が低下すると、日本の国力や競争力に大きなマイナスとなります。総力を挙げて、良い結果を出すように努力していきます。
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