2月半ばに行われた自民党総務会で、こども家庭庁設置法案が審議にかけられ、自民党として了承しました。この後、与党の政策協議会を経て、岸田内閣はこの法案を閣議決定し、国会に提出しました。最終的には、衆・参での内閣委員会においての質疑を経て法律となっていきます。
■ 求められていたこども家庭庁
もともと今回のこども家庭庁設置は、その構想が自民党の若手・中堅の提案から始まり、菅前総理のときに設置を決定し準備を始めたものです。昨年12月に子ども政策の推進体制(こども家庭庁のこと)についての基本方針をまとめるスケジュールでしたので、基本方針の最終とりまとめの前に菅前総理が退陣したため、官房副長官として菅政権で仕上げることができなかったという意味では心残りがある課題ではあります。
■ 「縦割り行政」の打破
こども家庭庁の発想の根本には、菅前総理が常々指摘していた「縦割り行政の弊害の打破」があります。
子ども施策は様々な役所部署にまたがっているので、「二重になっているのでは?」「基準が異なる」などの点が指摘されていました。そういう意味では、文部科学省が担当している幼稚園から高等教育までの教育の分野を切り離して、こども家庭庁に持ってくるのかどうかが一つの大きな判断だと思っていました。
若手・中堅の議論の中では、切り離すべしとの意見もあったと聞いていましたが、昨年12月、岸田政権が発表した基本方針では切り離さないことになっています。そのため、強い司令塔機能が発揮できるようにと、「文部科学省と密接に連携する」との文言が入っています。
確かに各地方自治体にある教育委員会との関係をはじめ、文部科学省から子どもの教育分野を切り離すに際しても、解決すべき課題は多く見えるのも事実です。切り離すことで子ども視点での教育はよりスムーズにいくかもしれませんが、教育という切り口での行政においては、ちぐはぐさが出ることも考えられます。
そのため、今回は両方を勘案したうえで、教育全体の統合性を優先させた組織の在り方を選んだ一方で、両組織の協議も求めるということでバランスを狙ったものと思います。
官僚のみなさんに話を聞くと、「とにかく子どもを中心とした役所ができることが重要で意義が大きい。こども家庭庁の大臣は他省庁の大臣への勧告権を有しており、また総理を長とする閣僚会議も開催されるので、やり方によって想定されるデメリットは克服できるのではないか」とのことで、今まで各省庁の隙間に抜け落ちていた、もしくは宙ぶらりんになりがちだった案件を受け止められ、即対応できるメリットの方が何よりも大きいと感じているようです。私も実効性のある行政対応を素早く行ってもらうことを期待したいと思います 。
■ 3つの部門
こども家庭庁の法案の中身ですが、まず「こども」の定義から入ります。「こどもとは心身の発達の過程にある者をいう」と定めました。
一概に年齢で区切れるものではない、個々人で状況が違うから、ということで柔軟に対応できるよう苦心の跡が見えます。
強い権限を有せられるように、こども家庭庁は総理直属の機関として内閣府の外局とし、一元的に企画・立案・総合調整を行うとされています。このこども家庭庁には3つの部門を置きます。一つは企画立案・総合調整部門で、文字通りの機能に加えて、情報発信や広報も担います。
次は成育部門です。妊娠・出産・就学前のこどもの支援から、相談対応、情報提供、すべてのこどもの居場所づくり、安全確保などを担当します。子ども食堂などもここが担当です。
三つ目が支援部門です。ここでは、様々な困難を抱える子どもや家庭に対する年齢や制度の壁を克服した切れ目のない包括的な支援や障がい児支援、子どもの貧困対策、ひとり親家庭の支援などを行います。
例えば、成育部門の「子どもの居場所づくり」ですが、今までは放課後児童クラブ、子ども食堂、学習支援の場、青少年センター等と厚労省、内閣府など、それぞれ部署が分かれていて、統一した指針もない状態でした。今後は成育部門で指針を作成し、そのもとでそれぞれの機能を効率的・効果的に展開していくことが期待されます。
■ 必要なのは「高さ」「感度」
そして何より、今までの政策の拡充も必要ですが、新たに生じてくる課題に対して迅速に対応してもらうことを最も期待したいと思います。私は休眠預金を活用して税金ではカバーできない社会課題解決の手助けをしている民間団体からのヒアリングなどを通じて、行政のアンテナの高さと感度を上げる必要性を常に感じています。そういう意味からも、行政変革の一つの成功事例となり、他の役所にも効果を波及させてほしいと思います。
来年4月1日からしっかり機能するよう、与党としても注文をつけながら協力していきます。
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