新しい年、令和2年を迎え、昨年と比べてもより良い年にすべく、全力を尽くしたいと思います。
去る12月、税制改正大綱を12日に決め、20日に予算原案を閣議決定し、そこで与党の国会議員はやっと一区切りついた感じでした。年変わりを一つの区切りとして私も改めて気持ちを引き締めていきたいと思います。
■ 防災体制見直しチームの座長として
この年末年始、令和2年は災害の少ない年になってほしいという声を多数聞きます。一昨年もひどい風水害があり、令和元年は…と期待したのですが、昨年も一昨年同規模の大災害が発生しました。台風19号では荒川があと2メートルの水位上昇で氾濫すると言われる状態にまでなりました。
気候変化が災害激甚化の一つの大きな原因と言われています。残念ながらまだ十二分に解明されていない状況ですが、政府はできることをできる限りやっていかねばなりません。
そうした背景のなか、この度自民党行政改革推進本部の防災体制見直しチームの座長を拝命しました。
■ FEMAに学べ
アメリカには大規模災害に対応する組織として、FEMA(フィーマ・アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)があります。FEMAは市や州では対応しきれない大規模な災害時に指示系統を一本化し、統括して対応しています。
日本は通常、内閣府の内閣防災と呼ばれるチームが担当していますが、本当に大きな自然災害のときには内閣官房に災害対策本部が設置され、直後の対応を行うことになります。
日本とアメリカとでは行政そのものや国と地方との組織の在り方が違うので、一概に単純比較してどちらがいいとは断言できません。しかし少なくともFEMAには学ぶべきところはあると思います。
一つは標準化、マニュアル化。もう一つは体験からくるノウハウや専門知識をいかに組織に積み上げていくかという点ではないかと思います。
■ 標準化とマニュアル化
大災害時は当然のことながら現場は混乱します。しかし、その混乱を最小限にするため事前にできる作業の一つに、共通部分を増やすというものがあります。
例えば以前は、西日本と東日本で消防のホースの形が違うということがあったと聞いています。つまり東日本の消防車が西日本に応援で駆けつけても使えないということです。
消防は基本的に市町村が責任を負っています。そのため調達資材なども市町村に任されるのが基本となります。するとそれぞれの市町村でそれぞれの業者と契約するので、違う規格のものが装備される場合もあるわけです。
現在はそうした単純な例は統一され、無くなったと聞いていますが、できる限り多くの災害関係者が戸惑うことなく使えるようにしておくことは意味があると思います。
また、ソフトの面でも、各市町村に任せることはメリットもありますが、避難所設置・運営のノウハウや物資輸送の道路状況の共有など、必ず苦労する点は徹底して基本のルールを決めておくことも必要だと思います。
■ ノウハウと専門知識の積み上げ
そして二つ目のノウハウの蓄積に関してですが、日本では入省・入庁してからずっと災害対応専属という行政マンはいません。異動でたまたま災害部署に配属された人が担当をすることになります。
担当者は災害対応で様々な経験をしますが、1~2年で別の部署へ異動します。多くは災害対応とあまり関係のない部署で、せっかくの経験・知識が次に活かされてこない場合が多かったわけです。ここにも工夫が必要だと思います。
政府はこの点に関しても動こうとしています。例えば災害対応にあたった職員は別の部署に異動しても「予備役」名簿に登録され、大規模災害の時には優先的に災害対応にあたってもらうようにするというものです。そのため、他の部署にいても最新の状況に追いつけるように定期的に災害担当者としての研修などを受けてもらいます。
その他、来年度から都道府県が技術系の職員を今より多く採用できるよう予算の手当てをします。
現在小さな市町村の多くでは、実は技術系の職員を採用できない状況にあり、橋やトンネルなどのインフラの老朽化の点検作業にも支障が出ています。そのため、採用ができないこのような市町村に対し、都道府県が技術者をプールして必要な市町村に派遣する制度を令和2年度から始めます。
この技術者プール制をうまく災害対応とリンクして、派遣項目に災害も入れておけば、災害時に市町村に人が送れるのではないかと考えています。
また各自治体からの要請もあり、国土交通省の現場にあたる各地方整備局の技術者の人員も増やす予算案を決定しました。これも災害対策が当然念頭にあります。
同時にもっと長期的な、例えば、まちづくりにおける排水容量の基準など、インフラやまちづくりに関する基準の見通しや災害対応の手法の変更も、絶えず議論して進めていくことが必要です。
■ 骨太の方針への反映を目指す
あちらこちらで今までの延長線上の対策では間に合わず、次元を変えた対策が求められるとの声も聞かれます。そういう基本的な検討も含めて、防災・発災直後の対応、そして復旧まで一貫した旗振り役が必要だとの思いがあります。
また10年間という期限がきられて設置されている復興庁をどうするか、といった議論もあり、この防災部分の機能を復興庁に新たに持たせたうえで存続させたらどうかという意見もあります。
とにかく幅広く様々な意見やアイディアを求め、またそれを踏まえて、今年6月の政府の骨太の方針を決める時期までには党の行政改革推進本部で提言できるよう議論を深めていきたいです。