「菅政権 この一年の主な実績」をお伝えしたところ、「スムーズにできなかったことの理由も教えてほしい」という声をいただきました。その方がずっと疑問に思っていたのは、「なぜ日本のワクチン接種のスタートが諸外国に比べて遅かったのか」ということでした。
■ワクチン接種の現状
現在、日本国内のワクチン接種は毎日約120万回のペースで実施されており、当初菅総理の掲げた1日あたり100万回の目標を上回っています。今春に入ってから本格的にワクチン接種が始まり、2回完了した人の割合は、間もなくアメリカを上回ろうとしている状況です。
■なぜ日本の本格接種は今年春になったのか
それは「国内治験を経てからの薬事承認」というプロセスを丁寧に行ったからです。
ファイザー社の所在するアメリカでは昨年12月の時点で緊急使用許可が出されたのに対し、日本でのファイザー製ワクチンの承認は今年2月になりました。薬事承認には製薬会社からの承認申請が必要ですが、ファイザー社が申請データの目途をつけ厚生労働省に申請をしたのが昨年12月で、今年1月末になって国内治験のデータが提出されました。
1日でも早いワクチン接種に向け、海外で普及している医薬品については日本国内での審査を短縮する「特例承認」という仕組みが使われ、ある程度期間が短縮されましたが、それでも「国内での審査を一切省略してしまおう」ということは行われていません。
海外の人に有効なワクチンであっても、それが日本人にも有効かどうか、人種差はあり得ないのか、重篤な副反応は本当に心配しなくてもいいのかを、国内治験のデータも考慮して検討したことになります。mRNAワクチンという新しいタイプのワクチンへの不安も世間に根強くあったなかで、国民の命と健康に責任を持つ厚労省として様々な歴史的経緯の中で適切に判断し実施したものだと考えています。
■これから解決すべきこと
ただし、今後も同じような公衆衛生危機があるかもしれないなかで、薬事承認の仕組みが本当にこのままでいいのか、医薬品医療機器法の改正も含め制度の見直しが必要だと思っています。コロナ禍をしっかり教訓にして、次なるパンデミックに対応できる法体系を構築していきたいと思います。