毎年12月、私たち与党の国会議員は、税制改正大綱と予算編成という国会の業務とは別の作業に追われます。
昨年はもともと税制改正のテーマの多い年だった上に、防衛3文書に関する議論も加わり例年以上に過密スケジュールでしたが、何とか年内にまとまり、新年を迎えることができました。
■ 安保議論を促進したウクライナ侵攻
昨年もいろいろあった年でしたが、私が一番大きいと思うのはやはりロシアのウクライナ侵攻・戦争です。世界の経済・社会に大きな影響を与え、今のインフレの大きな要因となり、各国で自国の安全保障の議論が盛んに起こりました。NATOに加入申請をし、国の中心的な姿勢を大きく変える中立国まで出てきました。
日本においても例外ではありません。そういう新たな意識を背景に様々な議論が展開され、先月、防衛3文書が閣議決定されました。
■ 「防衛3文書」とは
「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」を指します。そしてその役割と意味を今までの文書から少し変え、より効果を上げることを目指しています。
「国家安全保障戦略」は国家安全保障に関する最上位政策文書であり、伝統的な外交・防衛分野のみならず、最近大臣を設置した経済安保や技術・情報など、幅広い分野を含めた横断的な政府の対応を示しています。
その上で新たに「国家防衛戦略」を策定し、防衛目標とそれを達成するための方法や手段を含む基本方針を示し、その中で同盟国・関係省庁・自治体・産業界など、各レベルでの連携を進めていく必要を明らかにしています。
今回の3文書と今までとの違いの一つは、この連携・協力関係の強化に力点を置いていることにあると思います。
そして国家防衛に必要な装備の調達を計画的に進めていくために、今までと変えて「防衛力整備計画」を策定しました。
保有すべき防衛力の水準を示し、そのための中期的な整備計画として、おおむね10年間の自衛隊の体制や5カ年の経費の総額、主要装備品の整備数量(重要な装備品などには配備開始等の目標年度も表示)も記載されています。
■ 7つのキーワード
この「安全保障戦略」の中で、今後取り組む代表的な施策のキーワードを挙げると、以下の7つになります。
①自由で開かれたインド太平洋 ②反撃能力の保有 ③総合的な防衛体制の強化 ④防衛装備移転3原則や運用指針等の見直しの検討 ⑤能動的サイバー防衛の導入 ⑥海上保安能力 ⑦経済安全保障戦略
③以降は、防衛省だけでは到底やりきれない内容であり、各省・各国、民間セクターも含めて総力を挙げて取り組んでいかねばなりません。
特に海上での警察である海上保安庁とは、警備から防衛に移るタイミングや移行そのものが適切にできるのか、との課題が以前から指摘されていたところです。
すでに海上自衛隊と保安庁との共同訓練も始まっていると聞きますが、緊急時に必要な連携が取れるよう準備をしてもらわねばなりません。
■ 国の平和を守る予算
そして注目されている一つが、この国家安全保障戦略に記載された防衛予算をGDPの2%に達するよう措置を講じていくとの文言です。
2%という水準はEU諸国の一つの基準であり、特別大きな比率ではありませんが、今までの倍程度になっていくということで大きな転換点です。この点に関して、私は「額ありき」ではなく、きっちりした積み上げの作業をした結果をもとに予算を決めていくべきだと思っています。
国防全体の議論の前提でもありますが、まず、国の平和がなければ私たちの平穏な生活や日常はありません。仕事や家族や経済すべてが戦時下のものへと大きく変容してしまいます。
つまり国を存続させる大前提として安全保障が必要なのです。
国際環境を含め、日本を取り巻く状況が厳しいものへと変化しているときに、その変化に合わせた対応が求められるのは、国民の命と生活を守ることを第一義的使命としている国にとって当然のことだと考えます。
■ 「反撃能力」は日本独自の抑止力
今回その一つが「反撃能力の保有」を書き込んだ点だと思います。
たとえば、ウクライナではロシアのミサイルを迎撃ミサイルで打ち落とすといっても、100発のうち40発程度は着弾、つまりウクライナの領内に落ちてしまっているそうです。
日本も全ミサイルを迎撃できないのなら、敵のミサイル発射能力をつぶさない限り、敵のやりたいように発射されてしまいます。日本の防衛を考えたときに、反撃能力は必要であり、それを示すことが抑止力にもなります。
ロシアはウクライナの戦前の体制を見て、1週間でウクライナ政府を転覆でき、半年でウクライナ全土をロシア領として取り込めるとの確信をもって攻めたとのことです。
当初から今の状況が想定されるならば、ここまでの犠牲とリスクを払ってまで戦争を始めていないはずです。つまり、ウクライナの抑止力が全く働いていなかっただけでなく、「リスクが少ないのだから侵攻してしまえ」という決断を後押しさせる“隙(守りの甘さ)”がウクライナにあったと考えるのが自然です。
日本は抑止力として日米安保条約を中心に据えてきましたが、それに加えて日本が独自に抑止力を持つということも、「5年以内に台湾有事の可能性」が指摘されるなか、必要だと判断したわけです。
■ 危機的な「守り続ける力」
それに加え、今回非常に危機感を持ったのは「持続性」です。継戦能力とも言われる防衛し続ける力には、弾薬の在庫が不可欠です。しかしこれが現在致命的に不足していることがわかったのです。
それだけでなく、部品が不足していて動かない装備品も5割弱ほどあるとのこと。「共喰い」(他の装備品から部品を取り出し、同種類の装備に提供するやり方)で、使えなくなる現象も珍しくないそうです。また神奈川県内には戦前の建物などを使用しているところもあり、そういう箇所も再整備が必要です。
以上のほか、今回の3文書には防衛産業への対応や「デュアルユース」の先端研究、これと併せての財源論など、まだまだ論点があります。それだけ国際情勢が大きく変化しているということでもあります。
今年は平和安全法制時に流された「徴兵制の復活」や「日本が侵略戦争をする国になる」といった、何の根拠もない、この議論を避けるためだけのイメージ戦略に巻き込まれることなく、現実に地に足をつけた国民的な議論をしっかり進めていかねばいけないと考えています。
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