衆議院議員(5期) 神奈川第5区(横浜市戸塚区・泉区・瀬谷区)

能登地震発生から3か月 新潟・富山 視察報告 ~ 求められる「寄り添う対応」 ~

■ 委員会視察のメリット
3月25日に衆議院の災害対策特別委員会にて、新潟と富山の現地視察を行いました。私は大きな災害があると、必ず現地に足を運んでいましたが、基本的に個人の立場で行っていたので(先月の能登視察も同様)、衆議院の防災服を着用しての視察は初めてでした。
今回は災害対策特別委員長と与野党の理事で団を組んでの視察でしたが、衆議院と国の関係省庁の職員さんに付き添ってもらい、現地でも知事や市長をはじめ、自治体の責任のある方に対応いただいたうえで、国の補助金や交付金などへの要望を伺うこともでき、かなり効果的な視察だったと思います。

■ 被災者個人から話を聞くメリット
一方で、個人で被災地に入り、被災者当人からお話を伺い、行政の制度の足りない部分や配慮の及ばないところなどを指摘し、改善するといった従来の私のやり方からすると、被災者の個人の立場からの話を聞く余裕がなかったのは少し物足りなさを感じました。
個人から話を聞く大きな利点は、国と現場のギャップに気づき、改善することができるところです。
国が県に通達を出すと、県が関係市町村に伝達しますが、現場ではその通りに動いていないことが多々あり、委員会などの質疑でもその点が取り上げられています。そうした場合に役所が書く答弁書は、「再度しっかり通達を出して、行うように促します」というものになりますが、何度通達を出しても市町村の担当責任者までしか伝わらず、なかなか現場で作業する職員には伝わりません。そして、実際に想定通りに動かない場合に、被災者たちからはクレームとなって、現場に行った私が聞くことになったりします。
つまり、現場で被災者に向き合う職員さんが、どこまで国の施策の意図を汲み取り、場合によっては仕事が増えるかもしれないけれど、被災者に寄り添う対応ができるかどうかがポイントになるのです。
ですから、私は内閣府の防災担当の方にも「再度、通達を出します」という答弁は書くべきではないと話していますし、国の考え方を施策にしているのですから、そこをどう現場まで伝えるのか、つまり実際に社会に適用させていくかということを真剣に考えるべきだと感じています。

■ 新潟・富山の被害の大きさ
今回視察した2県は、揺れそのものによる被害よりは、液状化によるものが大きいところでした。しかも液状化による被害は輪島市や珠洲市などの被災現場と比べると被災状況のインパクトが弱いためか、あまりテレビなどでも取り上げられていないのですが、実際に見てお話を伺うと、大変なものです。
例えば家のダメージは大したことがなくても、基礎から傾き、家全体が斜めになっているのを戻す場合には1,000万円からの費用がかかるそうです。また、地中の配管等には大きな損傷があり、ここも能登半島の市町村と同等の工事が必要になります。
今回の液状化の被害を受けて、3/22に支援拡充策が公表されましたが、液状化の被害や災害という認識そのものが最近出てきた概念で(一説には、新潟中越地震以降とも)、今までの制度では十分考慮されていないとも言われています。
今回視察した新潟市西区坂井輪地区は元々、砂地の上に建物があり、しかも地下水位が浅いところにあるそうで、面的には対策の取りようがないとも思えます。そしてこの地域にある坂井輪中学校の南校舎は昭和45年頃の建築物で、今回建て替えることとなりますが、当然、かなり地中深いところ(硬い地層)まで基礎を打ち込むことになると思われ、今まで以上の費用がかかります。
しかし民間の建物を含め、この地区全てをこのように建て替えることなどできませんから、次に揺れがあれば同じような災害がまた起きることが想定されます。こうした地区をどのようにしていくのかも、今後の社会変動を考慮に入れながら検討していくことが必要になります。

■ 様々な「判定」から生まれた矛盾
そして今回もテーマの一つとなるのが、罹災証明書の住宅損壊度判定についてです。
新潟市では17,000件もの損壊住宅がありましたが、2次調査依頼は450件と、石川県と比較すると圧倒的に少なくなっています。しかしこれは1次調査への不満が少ないからではないのです。2次調査を依頼すると1次よりも軽い被害判定にされてしまうことがあると言われ、2次調査依頼申請ができないのだと地元の議員から説明を受けました。
また高岡市では、「赤札(危険と書かれた紙。立ち入るのが危険な状態)が貼ってある建物が、罹災証明書判断だと『一部損壊』、つまり『自分で少し手直ししてその家で住んでください、仮設住宅に入る資格はありません』と判定されています」と市長から現状を訴える声をお聞ききしました。
罹災証明書の「半壊」「一部損壊」などの判定は建築物の破損状況を判断する基準で、「住める/住めない」の判断をするものではありません。にもかかわらず、罹災証明書の判定を「仮設住宅に入れる/入れない」の基準にしていることは矛盾を生じています。
すべての物件を対象にするこれらの基準が完璧でないのは、ある意味仕方がないことです。それならば、不適切な案件が出てきた場合は柔軟に基準を対応させていく必要があります。
今回の視察においても強く感じたのは、災害という非日常は、様々な矛盾や非合理を伴うものでありますが、だからこそ現場を大切にし、現場の情報に基づいた多くの人が納得できる制度・基準の構築が必要だということです。
ここ何年かの経験が積み重なり、災害対策は以前と比べるとかなり進んだと、様々な現場を歩いてみて実感していますが、それでも災害ごとに課題が浮かび上がってきています。
今回の経験も含めて、これからも継続的に改善をしていく作業が必要です。その認識をもって、委員会の筆頭理事の仕事にも相対していきたいと思います。

視察の様子はこちらからご覧になれます。

新潟市西区坂井輪中学校周辺の家屋

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さかい学プロフィール

坂井 学(さかい まなぶ)

衆議院議員(5期) 神奈川第5区
(横浜市戸塚区・泉区・瀬谷区)
前内閣官房副長官
自民党横浜市支部連合会会長

言いだしっぺです

こんにちは。「言いだしっぺ」のさかい学です。 初めて選挙に挑戦して以来、ずっと続けているのが朝の駅頭活動です。 ここで私は日々の政治課題に対する私の考え、思いをお伝えしています。と同時に、皆さんからのお話をうかがう場でもあります。意見集約型の政治を目指す私の、大切なフィールドです。

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