衆議院議員(7期) 神奈川第5区(横浜市戸塚区・泉区)
前 防災担当大臣 国家公安委員長

自然災害リスクと日本経済 ~ 前防災担当大臣が考える地域防災力の強化 ~

私は前内閣で、大臣として判断し政策を進めていくという経験を通して、改めて重要な視点を得ることができたと考えています。
その1つが、日本の自然災害リスクに関する経済的影響についてです。

■ 日本は「リスクの高い国」
ミュンヘン再保険会社が評価した世界の主要都市の災害リスクを算定した数値(2005)があります(表①参照)。専門家もこの評価値をどのように計算しているのかその詳細は不明だとしていますが、「自然の脅威」「脆弱性」「災害に曝される財産・価値」などの項目が挙げられています。
この表を見ると、東京/横浜はズバ抜けてリスクが高いことになっています。この評価が日本にとってどのような影響を及ぼすのか。

表① ミュンヘン再保険の自然災害リスク指数

出典:平泉信之ほか(2006)「地震保険改善試案:高まる地震リスクと財政との調和を目指して」『PRI Discussion Paper Series(No.06A-14、pp.26-27)』財務省財務総合研究所研究部

■投資家が見る日本の「カントリーリスク」
投資家から見れば、日本はカントリーリスクが高い国となり、企業の価値を毀損しています。
東京大学生産技術研究所の目黒公郎教授曰く、「欧州の同規模・同技術水準の企業と比べ、日本企業は3分の1ほどの評価しか受けられていない」とのこと。
カントリーリスクとはその国の政治安定性に依るものとしか認識していなかったので、指摘されるまでは、日本企業がそれほどに低く評価されているとは考えていませんでした。目黒教授は、自然災害の発生頻度の高い地域に位置している日本を、「過去の災害経験を教訓に災害に強い社会の構築に努力し、世界の経済大国になってきた」と評し、「今後も日本社会の自然災害に対する強靭性を高め、同時にそのことを世界に認知してもらい、カントリーリスクを正当に評価してもらって、このリスク指数を現実的に下げていくために尽力したい」とおっしゃっていました。日本にとって、とても大事なことです。

■ 企業の取り組み-BCPとCCPの策定
そして、この強靭性を確保する一つに、経済活動の分野で重要なのが、BCPの策定です。
BCPとは、(Business Continuity Plan)の略で事業継続計画のことを言い、自然災害、大事故、テロ、サイバー攻撃、感染症などの緊急事態が発生した際に、企業が重要な業務を中断させない、中断した場合も短期間で再開、復旧させるための行動計画です。
同時に、企業はこの計画の上にCCP(Company Continuity Plan)と言われる会社継続計画を置き、事業継続可能な状態を確保していくなかで、会社を存続させていくことが大事です。つまり緊急事態によって周辺環境が大きく変化しても、そこに企業活動を合わせ、会社の存続をはかるわけです。
そして、多くの企業がイザというときの対応を準備し、自然災害などの緊急時の損失・損害を最小限に抑える体制をつくることが、投資カントリーリスクを下げることにつながります。

■ BCP策定の障壁
自然災害対策、特に事前防災の分野では、想像力がとても大事です。震災などが発生した時どうなるのかを想像し、その対応を行っていくということが必要となります。その想像力を助けるのが経験知であり、その集約化を図るためにも防災庁が必要だということで、今年中にも発足させることで政府は動いています。
直近の各調査結果によると、現在のBCP策定率は大企業が76.4%、中堅企業が45.5%、中小企業が約17%となっています。実際に被害にあった企業では大企業がより有効性を認識する割合が高い一方、BCP未策定企業の障壁として人材不足やスキル、ノウハウ不足が指摘されています。

■ BCP向上に向けた政府の取り組み
そこで政府等の対応も、一つは「事業継続ガイドライン」のブラッシュアップと普及に力を入れています。今までも必要に応じて改定を進めてきていますが、今年度中にも見通しの取りまとめや公表ができるよう取り組んでおり、有識者を含めた検討会の設置を予定しています。そのガイドラインに沿って各企業のBCPも向上することが期待されています。
また、中小企業の策定率が低い状況の改善を目指して、中小企業庁では防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定し、認定を受けた事業者は税制措置や低利融資や信用枠拡大などの支援を活用できる制度も行っています。
金融支援については、日本政策金融公庫によるもので金利が最大0.9%引下げ、信用保証協会による保証限度枠についても、この計画実行を目的とすると通常枠に加えて別枠での追加保証が受けられるという内容です。
またこの中小企業庁の支援とは別に、日本政策投資銀行(DBJ)が事前防災計画を格付けし、認定証や認定ロゴマークの使用を認め、PRに使える取組みなどもスタートしています。
DBJは事前防災投資を進めるためには更なるインセンティブ設計が必要であると認識しており、議論を一層深めているそうです。
こうした動きが滋賀銀行などの地銀にも拡がっているとのことなので、今後も期待したいと思います。

■ 企業間に広がる事前対策
当初は「個々の企業の対策」という認識からスタートしたこの考え方が、今は多くの企業が事前対策をとることにより、サプライチェーンが途切れない、経済的損失を最小化し、リスク化しない、つまりは地域防災力の強化という横の連携を伴った面的な把握へと変化してきています。
冒頭に述べたように、実際の経済的影響も出てくるようになっている分野です。多くの企業の協力を求めつつ、結果につなげていきたいと考えています。

※トップ画像:日本政策投資銀行主催(内閣府後援)の『防災トランスフォーメーションフォーラム』で防災担当大臣として挨拶(2025年9月)

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さかい学プロフィール

坂井 学(さかい まなぶ)

衆議院議員(6期) 神奈川第5区
(横浜市戸塚区・泉区)
防災担当大臣
国家公安委員長
元内閣官房副長官
元自民党横浜市支部連合会会長

言いだしっぺです

こんにちは。「言いだしっぺ」のさかい学です。 初めて選挙に挑戦して以来、ずっと続けているのが朝の駅頭活動です。 ここで私は日々の政治課題に対する私の考え、思いをお伝えしています。と同時に、皆さんからのお話をうかがう場でもあります。意見集約型の政治を目指す私の、大切なフィールドです。

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