■ それぞれの立場での「物資不足」
今年2月末にアメリカとイスラエルがイランを攻撃し、以後、令和8年度予算の編成時には全く想定していなかったホルムズ海峡封鎖が起こり、あちらこちらの現場でその影響が出ています。特に石油関連の物資不足が実体経済にまで波及してくる状況となってきました。
5月は総会の季節で、様々な分野の総会に伺いましたが、そうした場でも物資不足が話題となりました。「業者に注文を出しているが、いつ納入されるかの返事がない。政府が何とかするべきだ」といった趣旨のお話も多数伺いました。
一方で、「企業がいつ、何を、どれだけ、いくらで仕入れ、それをどう売るかというのは、利益を最大にするための企業の経営判断であり、これら民間の経済活動の分野に『都合が悪いから』と政府が介入してくるのはけしからん」とお叱りをいただいたこともありました。そういう時には、「有事ということで、今回は政府から流通にしっかり流すようにお願いしています」とお答えしています。
確かに難しい判断ではありますが、日本の状況を考えると、政府からの関与は致し方ないと個人的には思っています。「政府の効果的な関与の仕方」というノウハウがありませんし、劇的に改善されるという見通しも難しいと思っています。
■ 経産省の地道な取り組み
そうしたなか、経産省には100人規模のチームを作り、朝から夕まで現場からの報告をもとに流通・商社・メーカーなどに電話をかけ、一つひとつの目詰まりを解消していくという極めてアナログな対応をしていただいています。こうした地道な対応で少しでも改善していくしかない状況です。役所の担当の話では、出し渋りを指摘された業者も、今は電話での依頼に応えていただけることが多いそうです。
こういう対応をしているので、ご自身の事業でお困りでしたら、「どんな商品を、どれだけ、どこの会社に注文を出しているのか」を具体的に私の事務所に教えていただければ、上記のシステムに乗せて経産省に対応してもらえますので、連絡をください(連絡先は欄外をご覧ください)。また「中東情勢ワンストップポータル」からご自身で経産省に直接アプローチすることもできます。
■ 物資不足の原因は?
ホルムズ海峡が実質封鎖されていますが、日本に届いている原油量は代替手段を開拓し、今月から190万バレルとなります。これは封鎖前と比べて約8割まで戻っています。まだ不足している分を備蓄分から放出しているわけですが、原油輸入量が封鎖前の6割だった 4/27からの1ヵ月間で消費したのは9日分でしたので、計算上ではまだ203日分は残っています。この時の数値で単純に割れば22ケ月分以上の備蓄はあるということになります。8割に輸入量も増えている現状では、もっと長く備蓄が持つと考えられます。
こういう状況下で実際流通する原油量は今までと変わっていません。また、ナフサなども様々な手段で調達しており、封鎖前と遜色ない量が投入されています。それにもかかわらず、なぜ現場に物が不足しているのでしょうか。役所にも話を聞くなかで大きく2つのパターンがあると考えられます。
①注文量の激増
これまでに塩ビ管パイプ、エンジンオイル、食品ラップ、衛生用手袋などについてのご相談を受け、経産省に確認してもらいましたが、メーカーは昨年と比較しても15%、20%と増産しています。しかし卸業者に来る注文は50%、100%増という状況となっていました。
つまり、現場の事業者が先行き不透明なために必要な数量より多く卸業者に注文をし、その結果、余分に在庫として倉庫に積まれる事業者がいる一方で、真に必要数を確保できない事業者が出てきているわけです。そして「現場に回ってこない」という話が注文数増加に拍手をかけるという負のスパイラルです。
役所からも昨年、一昨年の実績をもとに、まずはその数量を流して、幅広く回るよう考慮してもらう依頼を関係各所に出しており、今月からはその部分は落ち着くようだとの報告を受けています。
②出し渋り
この場合、高値で売れるまで待っているということになります。実際、以前と比べてかなり末端価格は上がってきており、今月から値上げされた物品もかなりあるとのこと。一方で先述したように、原油の獲得率も80%に上がり、またアフリカからの原油ルートも新たに決まったというなかで、そろそろ落ち着くのではないかとの憶測が流れれば、利益を確定させるためにも、この新価格で流通にそれなりの量が出てくることも期待されています。
いずれにせよ、日本国内のどこかには商品が積まれているはずなので、それぞれの業界内でうまく融通しあってほしいものです。
■ 次なる混乱に備える
そしてホルムズ海峡風鎖が解放された後の不安もあります。資材の獲得と流通が正常に戻れば、在庫品から使用されることになります。するとしばらくの間、今度は新規の注文が入ってこなくなることが容易に想像できます。商品のだぶつきという、逆の面での混乱が想定されるわけです。
今回の混乱は一段落した後、やはりしっかりと検証し、政府が取るべき政策手段を平時に詰めておく必要があります。
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