■ 想定すべき自然災害のひとつ
先月、NHKスペシャルで「富士山噴火」をテーマにドラマ仕立てにされたものが放送されていましたが、隔世の感とはこのことだと思いました。
というのも、35年ほど前の話ですが、マスコミに内定が決まった先輩が、甲信越地方の地元ネタを取材するという入社前の課題に、「富士山だけに噴火ハザードマップがない謎」をテーマに聞き込みを始めたところ、会社から注意され企画はボツになったそうです。その理由は「風評被害が広がったら観光客が来なくなるから」でした。
確かに私が子どもの頃は、富士山は休火山と学校で教わりました。昔は噴火をしたけれど、今は活動を休止中で噴火しない安全な山という内容だったと思いますが、今考えるとある種の配慮が働いていたのでしょうか。
現在では、富士山は火山としては若い火山で、人間でいうと20歳前後、活発な活動が見られる山ということになっているようです。歴史的には富士山では大・中・小様々な噴火が 30年に一度ほどの頻度で起きていて、 1707年以降、300年も噴火がないのが珍しく、専門家の中には次の噴火はその分かなり大きなものになるのではないかと言う人もいます。
■ 戸塚区・泉区では20cm以上
私が防災担当大臣だった昨年3月、「首都圏における広域降灰対策検討会」で『首都圏における広域降灰対策ガイドライン』を検討してもらい発表しましたが、この時のシミュレーションは直近の1707年の宝永大噴火のケースを想定しています。
この噴火は大きいものと認識され、「2週間灰が降り続け、最終的に麓では260cm以上、風向きによっては戸塚区・泉区のあたりでは20cm以上、新宿あたりでも10cm弱積もる」という想定もあります。そしてその影響は大きなものが予想されますので(表①参照)、正しく認識し、正しく恐れ、しっかり対処することが必要だと思います。
表① <各分野における降灰の影響・被害>

■ 火山灰による影響・被害
まず必要なのは、噴火、そして降灰による影響・被害を知ることです。昨年のガイドラインの発表に際してこの件を勉強した時、その影響の大きさに驚きました。特に想定外だったのは鉄道と停電の項目です。
微量の降灰で電車は動かなくなり、移動ができなくなります。また3mmの降灰と雨で停電の恐れが生じるそうです。しかもどこが停電するか起きてみないとわからない。実験では漏電することは確かめられていますので、検討会でも一定の条件を設定したうえで「東京電力管内で40万世帯が停電」と試算しています。
上水道にしても、火山灰を含む河川水を取水して浄水にしていくことになりますが、その負荷がどれくらいのものか詳細な研究は結果を聞くことはできませんでしたし、降雨時にに大量に流れ込む火山灰が下水システムに及ぼす悪影響、すなわち下水管の中に残ったり、沈殿槽に溜まったりする火山灰の影響なども聞けていませんでした。
今まで自然災害対策というと地震、台風、洪水などが中心で、噴火、それに降灰対策というと、実は本腰を入れ始めたばかりというのが私の認識です。研究に関してもまだ不十分ですが、具体的手段の検討もこれからです。
■ 具体策はこれから
ガイドラインでは降灰中は自宅待機とされていますが、30cm以上灰が降ると木造家屋が灰の重さで押しつぶされる可能性があるため、「降灰地域外へ退避」となっています。しかし、道路が灰のために走行できなくなり車両が立ち往生していたり鉄道が機能しない状況でどうやって地域外に何万人という人を退避させるのでしょうか。またそうしたなかでエッセンシャルワーカーは勤務先に宿泊することが求められるのではないか、街の最低限の機能を継続させるための手立てはどうするのかなど、役所の担当者にこれらについて聞きましたが、詳細の検討はこれからだということでした。
■ 期待される防災庁の役割
NHKスペシャルのドラマでは、トラクターが登場して活躍していました。また、今後降灰用のチェーンが開発されるかもしれません。様々な可能性と組み合わせなどを試み、しかし、事前に準備できることは残さずやりきってほしいです。そうしたことも、防災庁(審議中の法律が成立すれば、今年11月にも設置されると言われている)に期待しているところです。
私が防災担当大臣就任時に内閣府防災の定員は110人で、昨年度に220人に増員しました。そして防災庁が設置されれば352人となる予定です。就任時は目の前の災害後の対応で手一杯だったのが220人になっただけでも、地方公共団体との意思疎通も図れるようになった上、事前防災にも人を少し回せるようになりました。352人となれば、この富士山噴火をはじめ、いくつもの課題に対し研究分析、そして政策化の作業ができるようになるものと期待しています。
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