これまでに防災と警察の仕事に関しては一部触れてきましたので、今回は他の担当分野の一つ、「海洋」についてお伝えします。
■海洋基本法のもとに連携
日本は四方を海に囲まれている国ですから、海との関係は様々なところであります。安全保障、水産業、運輸(海運)、海上交通、エネルギー、海洋資源、そして深海潜水技術など、大変幅広い分野で関わりがあります。これらの取り組みを有機的に連携させるために、海洋基本法が平成19年に議員立法で国会に提出され、成立しました。
前述した各分野それぞれの担当現場で予算取りをして事業を進めてきていますが、バラバラだったのです。この基本法を根拠に、総合海洋政策本部と事務局が設置されました。同時にこの基本法に基づいて、海洋基本計画を策定してきています。
平成20年が第一次計画のスタートとして、その後5年ごとに更新され、現在は令和5年から5か年の第四次基本計画の下、事業が進められています。
そして昨年、また新たな動きがありました。この基本計画はすべての海洋関係を網羅しているものであり、逆に言うと、総花的で焦点が見えにくくなっているのではないかという指摘があり、自民党内の海洋小委員会の議論を経て、国益に直結するポイントを海洋開発等重点戦略として決定すると同時に、毎年度、どこまで進んでいるかのフォローアップをすることになりました。
同時に、この戦略は重要だということで、現在は議員立法でこの重点戦略を基本法の中に位置づけられるべきだという法改正の動きがあるそうです。
■総合海洋政策本部の位置づけ
総合海洋政策本部事務局は、基本的には調整機能を持つだけです。法律を所掌し、計画策定をしますが、海洋資源開発は経産省、水産業は水産庁、物流・交通は国土交通省…というように、それぞれの現課で実際の事業を持っています。
本部事務局の昨年度の当初予算は、なんと7,000万円。今年度の当初予算は4億3,000万円と6倍にしてもらいましたが、それでも何かの事業を動かしていくのは無理です。あくまでも調整作業の中で実績を各事業が挙げていく構図をどうやって作っていくか、難しい部分を担っています。
■国益に直結する重点戦略
以下の6点を主な成果指標・目標として挙げています。
①自律型無人探査機(AUV)の開発・利用の推進
②海洋状況把握(MDA)及び情報の利活用の推進
③洋上風力発電の排他的経済水域(EEZ)展開に向けた制度整備の推進
④特定離島である南鳥島とその周辺海域の開発の推進
⑤管轄の保全のための国境離島の状況把握
⑥北極政策における国際連携の推進等
①は海の中を無人・自動で探査できる小さな潜水艦のようなもので、「水中ドローン」とも呼ばれています。これがフルに活動できれば、海中のパトロールを24時間できるようになります。また、人間が行けない深海を航行することができ、海中・海底の状況を知り得ることができます。この技術が進化すれば、省力化のみならず、幅広く様々な情報を入手でき画期的なことです。
②の海洋状況把握(MDA)は見慣れない用語かと思いますが、様々な海洋にかかわる情報を収集・集約・共有する取り組みのことです。安全保障環境から海難事故の原因や海洋由来の自然災害、海洋汚染など、分野は多岐にわたります。
③のEEZにおける洋上風力発電を可能とするための法案は、本来は昨年に成立させる予定だったのですが、廃案となってしまい、今年国会に提出し直し、本稿の執筆段階では、参議院先議で審議され、衆議院に送付されている状況です。
カーボンニュートラルを実現していくなかで、カギとなる風力発電をEEZ上でも行うことは、大きな期待を寄せられている分野です。すでに計画から一年遅れてしまっていますが、まずは法律を通して法環境面だけでも一刻も早く準備して、事業化に官民共に進んでいく所存です。
そして④では、内閣府が行っている南鳥島の開発について触れていますが、これは海洋資源開発のことです。この辺りは純度の高いレア・アースが採取でき、ここのみならず他にも経産省が技術開発を行っており、まさしくこれらの試みが商業化されれば、日本も資源を持つことができます。
■海洋政策の旗振り役をめざす
このほか、国境離島も海洋担当に入ります。国境離島は日本の領海、EEZの画定などにも直結します。波打ち際などを正確に把握することで、正しい領海を確保することができます。航空レーザー測量などを用いた実施計画を策定しています。
このように、実は海という切り口で見ると、見えてくる課題は幅広く、多岐にわたりますし、日本という国の切り札にもなっていくほどの重要な局面もあります。にもかかわらず、本部事務局は平成19年から(まだ20年も経っていない)という「後発」であるがために、今は各役所の取り組みと比べるとプロジェクトを持てず、影響力のある分野に間接的にしか関われないこともありますが、今後生じてくる課題や役割はぜひ総合海洋政策本部が実質的な旗振り役となれるよう、今できることを一つひとつ積み上げていきます。
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