■ 松下幸之助塾主の存在
先日、私がお世話になった松下政経塾の現役の塾生と懇談する機会をいただき、私にとっての松下政経塾、私なりの松下幸之助塾主の考え方というものをお話しさせてもらいました。
塾主から学んできたものは今までの私の生き方の大事な部分を担っています。そこで、「坂井学」という人間を理解していただく上で役に立つかもしれないという思いで、今回ここで述べてみたいと思います。
実は、政経塾10期生の私は松下幸之助塾主にお会いしていません。入塾後1ヶ月もせずに亡くなられてしまったからです。ですから、私の松下幸之助像は書籍と諸先輩方からの情報がすべてであり、あくまで私個人の受け取り方だということをご了解いただきたいと思います。
■ 「天地自然の理法」の存在を認める
「松下政経塾で学んだものは何ですか」という質問をしばしばいただきます。それに対して私は「目に見えないものの存在に気づかされたこと」と答えます。
塾主は「経営のコツは百万両」と言っており、これは商売だけでなく、生き方全てに繋がります。残念ながら「教えることは出来ない」とも言っておられ、この「コツ」を自修自得で身につけさせたい、少なくともその端緒を塾で掴んでもらいたいと、政経塾をつくられました。
別の言葉では、「天地自然の理法」とも表現されています。つまり、この世の中には物事が動いていく約束事があり、それに逆らわない判断をしていけば、必ずうまく事が運ぶというのです。
天地自然の理法に沿った判断をすることが経営のコツであり、そうすると成功するというのです。しかし、それをどうやって自修自得するか。そのキーワードは「素直」です。余計な先入観や損得の邪念を入れることなく、「本質は何か」を徹底して追求せよということなのだろうと私は思っています。塾主は「根源さま」という形でお祀りし、しばしば祈っておられたと聞いていますが、「本質」を求め天地自然の理法を掴みたいとされていたのだろうと私は推測しています。
■ 「天地自然の理法」と「天意現成」
これらの塾主の姿や文章を見聞きしていくうちに、私という一個人を大きく超える力がある、つまり、天地自然の理法の存在を認めることができるようになってきました。その経緯の中には、きわめて個人的な経験も含めいくつかあるのですが、やはり体験すると、大いに実感すると思います。だからこそ、体験できる「現場」が大事だと私は考えます。
そしてこれらの体験をさせてもらったのは、当時の熊本県阿蘇郡蘇陽町にある幣立神宮の境内に住み、配管工をさせてもらっていたときでした。勤めていた会社の社長さんのお宅に「天意現成(てんいげんじょう)」という書が掲げられていました。「現成」とは禅宗で用いられ、眼前にありのまま見える形で表れていること、自然にできあがっていることなどと説明されていますが、あるとき私の中にスーッと入ってきたのです。
私たちは自分なりに日々、選択をして生きていますが、特に大きな選択と思われるときには、どうしても「どちらが将来の自分に得か(メリットがあるか)」と考えてしまいます。そして自分の思いに反した選択をすることもあるかと思います。
しかし自分の浅はかな判断での損得など、何かしらのアクシデント一つですべてがひっくり返り、水泡に帰すこともあります。それよりも、天地自然の理法に沿うべきと考えて選択をしていけば、自然と自分が願う形を与えられる、そういう現実が表れてくる、つまり天意現成です。そう考えられるようになりました。
大事なのは本質を見極め、天地自然の理法に沿った判断をし、素直になる努力を続け、その天意なるものを担えるだけの力量を持つことであり、それができる人間となれれば、必ずそれに合ったお役目が回ってくるのです。すると、日々の生活や節目の選択のときも、諸々、焦らずに済みます。
■ 素直な心で待つ
幸之助塾主は若い世代に「名利を求めるな。待て」と何度もメッセージを出していますが、今の私なら納得できます。以前、ある方から「人に会うにも、会うべき『時』というのがある」という教訓を教わりました。自分がそれだけの力量も無いのに、無理に力のある人や有名な人に会っても、その出会いは活かされないというのです。何につけても、自分がそれだけの人間になる努力を続けることが大事だということです。
その日々の努力の在り方が、「素直な心」。そして私の経験から言えば、「天意」は、それに見合うときにその人にわかる形で現れてきます。どうしようもなく選びたくなる、ストンと腑に落ちて腹が決まる、といった風に。
そのときは、それに向けて全力を挙げて臨んで間違いありません。そのときのチャレンジは必ずしもうまくいくとは限りませんが、それは過程です。「成功の要諦は、成功するまで続けることにある」のですから、天地自然の理法に沿っていれば、必ず成功に導かれるはずです。
しかも、現在の世の中では益々追い風が吹いています。どの分野でも人材不足です。将来どうやって食っていくんだ?という不安はあっても、このご時世、力のある人を放っておくわけはありません。そのことが信じられるかどうか、ということです。
塾主も「起業しやすい世の中」になったと記していました。確かに、塾主の時代よりも行政の支援があり、ネットで様々な情報が入ります。
しかし塾主がそう考える大きな理由は「やるべきことをやる人が減っているので、すべきことをしていればただそれだけで目立つ」からだ、と。
最後に私の今の考え方そのものだなという言葉に出逢ったので記しておきます。あるお坊さんのお話の中で紹介されたものです。
「天命に安んじて、人事を尽くす」
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東日本大震災直後にさかい学が立ち上げた復興支援グループ・『ゆいっこ横浜言いだしっぺ支部』の物資提供の呼びかけに、松下政経塾ではトラック2台分の支援物資が集められました。この後、さかい学たちゆいっこメンバーは、この物資をは岩手県大槌町の安渡小学校避難所に運び込みました。冒頭の「現役政経塾生との懇談」の際、政経塾の事務局の方々がこの一件を思いだし、現役塾生にお話しされていました。