■ 「決める政治」のプロセス
私たち与党の国会議員は、毎年年末には臨時国会での審議とは別に、次年度の税制改正大綱をつくる作業、そして次年度の当初予算に関しての作業などに追われます。
通常、「政府与党」と同一のもののように表現されていますが、実はこの時期は政府、つまり役所側と私たち議員側とは、あるときは力を合わせて協力し、あるときは正面からぶつかってよりよい政治・財政のあり方を議論します。
この過程があるからこそ、結論に至りそれを公にした後は、政府と与党が共に政策実現のために全力を傾けることができるわけです。この真摯な議論を経ないと、「決められない政治」に陥ると考えています。
■ 政務調査会の仕事
そのため、この時期は政府、つまり役所に与党としての考えを伝える「決議」や「提言」といったものが、それぞれの部会(役所の所掌ごとに分かれて、政策などを議論する政務調査会の下にある党の正式な機関)や調査会などでまとめられます。
政府はこれら自民党から出された意見・提言を参考にし、税や予算に反映していきます。これは、議院内閣制を採用している国にとって、その制度が想定している大事なプロセスでもあります。
私は現在政務調査会の副会長という立場をいただいており、各所でまとめられたこれら決議などが、自由民主党の決議として適切かどうかの審査を行う政審に参加しています。
当然、様々な分野の提言が審査に付されますが、今月はその中の外交に関するものをご紹介します。
■ 国際社会で求められる日本の役割
『外交力の抜本的な強化を求める決議』と題された文書が、党の「外交部会」「外交調査会」「国際協力調査会」の合同会議でまとめられました。
その内容は、現在の厳しい国際情勢を具体的な国名も挙げて記述した後に、ODA予算や外交官の数、在外公館の数を増やすべきである、というものです。
こうしたときよく聞くのは、「国民の生活が苦しいのだから、外国を支援している場合じゃない」「中国は国際社会で影響力が増大しているのに、日本は情けない」などの批判です。
確かに日本は外交ベタとも言われてきていますし、情報インテリジェンスの組織も持ち合わせていません。
戦後長い間、アメリカの傘の元で守られてきた時期もありましたが、国際社会において既に日本は自立していける力を持っているため、他国も自立していくことを求めてきています。私自身も、未だ十分ではないという認識を持っています。
■ 仲間づくりのための支援
国際政治・外交はきれいごとではありません。「平和外交を推進する。日本がその態度を示すことにより、他国から攻撃されることはない」といった日本の防衛政策を掲げている政党がありますが、そんなことが事実ではないことはウクライナを見れば誰もが理解するはずです。地に足を付けた、現実に即した議論をせねばなりません。
国連をはじめ、国際的な組織の多くは、大きな国も小さな国も「一国一票」で採決します。事務局長などの役職の選挙もそうなっています。日本の国益に沿う決定をしたり、日本が連携できる人に組織の中枢のポストで活躍してもらうには、これら採決結果が大事になってきます。
そのポストを獲得するためには、そういうときに一緒に行動を取ってくれるような関係を持つ国々を、日本は常日頃から確保していく必要があります。しかしそのためには、単に仲良く交流しているだけでは不十分なのです。そこには、金銭的援助をはじめとする支援の裏付けが必要です。
■ 「自国第一」の国際社会
どの国も、自国の利益を最大にするためには、今までの関係などいとも簡単にひっくり返してきます。
例えばインドネシアは、高速鉄道の発注に関して、日本とずっと準備を進めてきたにもかかわらず、中国が「政府負担(政府債務保証も)無し」と言った途端、中国と契約してしまいました。
また、オーストラリアはアメリカから潜水艦技術を提供してもらえるようになったため、既に締結していたフランスとの潜水艦製造契約を破棄し、それに対してフランスが非難声明を出したことは記憶に新しいと思います。
生き馬の目を抜くようなことが平然と行われているのが国際社会であり、国際政治です。その中で最大の国益を求めるためには、一定の費用はかかるということを私たちは理解する必要があります。
■ 外交官と在外公館の力
今回の文書では、外交官の活動予算が十分ではないことも指摘しています。今は円安ということもあり、特に海外勤務の外交官に予算的な制約がかかっていますが、実は外交官の旅費規程が何十年も前から変わっておらず、海外への出張時などには自己負担が生じているとのことです。私も副大臣として海外出張した折は、自腹で不足分を補っていました。これでは十分なパフォーマンスが期待できません。
また在外公館という、大使館や領事館といった機能も重要です。
中国の在外公館数が280以上なのに比し、日本は230台。まずは250を目指すことが提言されています。相手国に対して、「自分の国に日本の公館がある」ということが大切なメッセージになっていきますし、常駐しているか否かで入ってくる情報の質も量も異なるのは明白です。
そして何より、これらの機能を投入するだけでなく、有効に活用していくことが求められます。私が官房副長官として官邸にいたとき、外交案件の多さが予想を遙かに超えていたことに驚きました。国際政治は常に動いていて、常時それに対応しているということを、身をもって感じたものです。
今回も私は外務省に対してこの点を国民に理解していただくための努力をもっとすべしと指摘させていただきました。もちろん私も努力していきます 。
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