今年の9月の台風15、19、21号は、日本列島に深い傷跡を残して去っていきました。
15、19号は上陸すると予想され、実際に上陸したので、一定の被害を想定し、政府もいつも以上の体制をとり、緊張感と覚悟をもって台風を迎えました。
しかし21号は上陸しなかったにもかかわらず、その影響による大雨は大きな被害を引き起こしました。
近年で特に被害が大きかった豪雨災害には、北九州(H.29年)や西日本(H.30年)がありますが、これらは一定期間かなりの量の長雨が続いて引き起こされたと記憶しています。
一方、今回の台風のように、一日に一ヶ月分の雨が降り、これだけの浸水被害を引き起こすこともあります。
その他の自然災害では地震、津波、高波、竜巻そして火山の噴火なども記憶に新しく、災害の種類も増え被害も大きくなっています。
■ 災害に備える国の施策
国土強靭化のための予算は現在「特別3か年強化計画」の2年目が執行中で、3年目の予算編成の途中です。ただ、今回の21号の影響の大雨でも5県27河川が氾濫しており、これらの状況を検証した上で、必要があればこの計画の延長も検討しなければいけないと思います。
このように災害対策でインフラ整備に力を入れる一方で、それを超える災害の発生も想定していかねばならないと考えています。
国は災害対策基本法、土砂災害防止法をはじめ、いくつもの法改正を行ってきており、できる限りの対応に努めています。
例えば、一定の条件下においては、国の公金を個人の財産である住宅に補助することができる財政運用の例外の制度まで整備して活用いただいています。
しかし災害における被害者を少なくするためには、国の制度をつくっただけでは不十分です。必要なのは「安全なところに避難してもらうこと」であり、そのための環境づくりです。すなわち現場で危険をどれだけ回避できるか、つまり早めに避難をしたり、外に出ないで済む状態をいかに創り出すかにあるのではないでしょうか。
■ 「避難してもらう」が課題
今回も台風15号で怖い体験をされた千葉県のみなさんは、19号を前に早めに避難所へ移動したと報道されていました。
私たちの課題は怖い体験をせずとも、避難行動をとってもらうということです。そのためには各自治体、もっと言えば、ご近所さんレベルの町内会自治会や、その中の班単位で認識を共有して声掛けや移動補助の体制を予め考えていただくことが必要だと思います。
これらは私たちの社会として、災害に備えるという意識共有が極めて必要だと感じています。
以前、避難所へ行かなかった理由をヒヤリングした際、「避難している人が自分だけだったら恥ずかしい」「知っている人がいなかったら居心地が悪い」なども挙がっていました。これらの感覚は、「避難所へ移ることが当たり前」にみんなの意識が変わればなくなっていくと思うのです。
■ 「計画運休に」見る変化
今回、鉄道各社が計画運休しました。一昔前では考えられなかったのではないでしょうか。
鉄道が運休することで強制的に外での移動や行動を制限されますが、生命の安全を考えたらやむを得ないとするコンセンサスができ始めているのではないかと感じます。この件に関しては評価できます。
■ 「車中死」を無くせ
同時に、今回新たに課題となったのが、車内における被害です。
21号の大雨での被害者の半数が「車中死」だったと報告されています。19号災害でも複数の「車内」被害が出ています。それぞれ「家族を迎えに行く」「職場からの帰り」など理由があったと思いますが、それらも検証しながら、今後「車中死」を無くすための対策が必要です。
道が陥没していたり、橋が流されているという危険のほか、水深30?程度でも水がエンジンルームに入り停止してしまう危険があります。改めてその危険を共有するとともに、大雨時に車で移動しなくて済む方法を考えておくべきです。
■ 「激甚災害指定」とは
最後に「激甚災害」の指定について触れておきます。
ある地震災害の直後、「こんなに被害者が出て困っているのに、政府の激甚災害指定が遅い」と政府が批判されたことがあります。
激甚災害指定とは、一定の基準を超えて被害が大きかった場合、復旧する際の自治体の負担を減らし、国の負担を増やすために行われるものです。そのため全体の被害額や状況をすべて把握してから判断します。
基本的には困難に直面している被害者対策とは直接関係するものではありません。19号災害に関しても、取り急ぎ7.1億円を投入して必要と思われる物資などを被災地に送り込んでいます。
激甚災害に関して、今年は5000億円計上している予備費を用いて早急に対処しています(私が財務副大臣の時には3500億円でしたが、昨今、災害が多く、昨年などは枯渇する心配があり、補正予算で追加手当てをしました)。
これだけ被害の大きな災害が毎年起こるとなると、国としてはインフラの基準などは根本から見直しが求められます。と同時に、人的被害を減らすためには、店を閉める、イベントを中止するなどの負担を社会として引き受けていくコンセンサスを醸成させていくことも重要です。
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