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官房副長官が見た菅政権の外交 ~ エゴとエゴがぶつかり合う国際交渉 ~

2020年12月01日

内閣官房副長官に就任してから、早2カ月半以上が経ちました。実際にその業務を遂行するなかで、もちろん知っていたこともありましたが、想像を超えていたこともいくつかあります。
その一つが外交案件の多さです。頭では外交、他国との交渉・やり取りが政府の重要な役割だとわかっていたものの、総理・国のトップの外交というのが、こんなに影響力が大きく、決定権を持つものかと改めて実感します。だからこそ、総理が出番を求められるのであり、官邸内での対応も多くなるわけです。

■ コロナ禍での外交
先月も多くの外交案件がありました。
オーストラリアのモリソン首相や中国の王毅外相、IOCのバッハ会長などが来日し会談していますし、ASEAN関係の会議、RCEP総会、APEC、G20の首脳会談などはオンラインの会議に参加しています。その合間にも、電話による1対1の首脳会談を行っているのです。
今はコロナ禍で以前と同じようには海外との往来はできませんが、許されるのであれば、国益のためにできる限り総理には国際社会において日本の代表として外交を行っていただきたいと思っています。
外交の場も、「打ち合わせが済んで会談がセットアップされて総理が出てくる場面」などでは予定調和で終わる場合が多いわけですが、そこに行くまでは少しでも隙を見せたらそこに付け込まれるという気の抜けない駆け引きがずっと続きます
そういう時に総理の発言や総理が相手側から何かの発言を引き出した場合には、それが交渉の分かれ目になるということもあるそうです。

■ 世界の3割を占めるRCEP
今回行われた一連の会議の中で、そういう交渉をずっと続けてきたのがRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership「地域的な包括的経済連携」、呼称は「アールセップ」)です。私もこの首脳会合に同席しました。
東アジアでの貿易自由化に向けた経済連携協定として、15ヶ国で署名をしました。交渉開始から13年かかっています。この15か国の人口は計約23億人で、世界の約3割。同時に国内総生産(GDP)の合計も同じく世界の3割を占める大きさになります。
この協定が発効するには、ASEANで6ヶ国以上、その他の国々で3ヶ国以上が批准することが条件とされています。日本も次期通常国会での承認を目指します。
当初インドも含めて16ヶ国での署名を目指していましたが、最終的にはインドは離脱しました。日本としては大国インドが参加することで、日本と連携関係を持ちながらバランスの良いRCEPの運営を想定していましたが、その構図は崩れてしまいました。
しかし他の国々もインドの参加を望んでいるため、インドだけは参加の意思を決めたらすぐに参加できる特別な位置づけとなっています。
報道によると、インドの不参加は中国から安い物品が関税なしでどんどん入ってきて、インドの製造業が中国製に追いやられ、経済が崩壊する危機を感じて脱退したと解説されています。

■ エゴとエゴのぶつかり合い
逆にこのRCEPが注目されているのは、中国が参加する初めての大型自由貿易協定だからです。自由化に消極的だった中国が昨今の状況を鑑みて方針転換をしたのです。これも報道ベースですが、特に現在、摩擦を強めているアメリカに対抗して、ということが言われています。
元々はアメリカもかなり力を入れて進めていたTPPが、中国を意識したものとも言われていました。しかしトランプ政権誕生により、アメリカはTPPから外れてしまいました。これらを見るだけでも、いかに自国の国益を考えて各国がしのぎを削っているかがわかると思います。国益と国益のぶつかり合いですから、中心的に進めている国であっても、他国に迷惑をかけることになろうが、自国のためにある意味「何でもアリ」の状態と言えるのかもしれません。そういうエゴとエゴのぶつかり合いが国際交渉です。

■ 「国際ルール」下の中国
今回のRCEPはインドが抜けて、中国の存在感が大きくなったと分析する向きもあります。その点に対する警戒感は確かにあると思います。しかし、今回の20のルール分野の中には、投資、知的財産、電子商取引などの項目があり、参加国はこのルールに従うことになっています。中国にとって、実はこういうルールに縛られるのは初めてと言っていいと思います。
今まで中国進出に、あれこれと制限や条件を付けてきたということも聞いていますが、これからはこのルールに従っていかねばなりません。今後は各国がこれらのルールをきちんと順守しているかをしっかりとチェックする必要があります。日本は中国との関係においても、「国際ルール」を大いに活用すべきところかと思います。

■ 首脳会合を支える官邸
関税の中身についての詳細は役所のHPなどで確認していただきたいのですが、日本にとって農産品の主要5品目(米、牛・豚肉、麦、乳製品、サトウキビ等甘味資源作物)は適用外に置くことができましたし、中国向けの無関税品目の割合は現行8%から86%へ、韓国向けは現行19%から92%まで、最終的には拡がっていきます。
その他の関税も引き下げていくものもありますが、すでにスタートしているTPPなどの協定と比べて、日本にとってそれらより厳しいものはない状況です。つまり、すでに発行している協定の範囲内に置くことができた、ということです。
今回、日本にとってはかなり良い条件で署名できたのではないかということを聞いていますが、ここまで来るのは各国の利と利のぶつかり合いの中でたやすいことではありません。しかし、こうやって国益を固めていくのです。
その重要なパーツとなるのが、総理の首脳会合です。最大限にその効用を活かすべく、官邸でしっかり努力していきたいと思います。

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