有事を見据えた平時の準備 ~ 防災体制見直しチームの提言 ~

2020年07月01日

今年はコロナ禍により政治的なスケジュールも乱れています。例年8月末が締め切りの各省の概算要求が今年は9月末と1か月遅れます。そして毎年6月には閣議決定してきた骨太の方針なども7月へとずれ込んでいます。
この原稿を書いている現段階では、方針にどう書き込むのか最後の詰めの交渉があちらこちらで行われており、自民党内でもそれと歩調を合わせて様々な提言を政府に提出すべく作業が行われています。
今年の1月の「今月の主張」でも書きましたが、私は党の行政改革本部のメンバーとして防災体制見直しチームを担当しています。自然災害関連というと、国土交通省や消防庁をはじめいくつもの省庁や部署が関係しますので、現在は内閣府の中に内閣防災と呼ばれる政策統括官をヘッドとする防災担当部署があり、各省連携を含めて対応しています。この内閣防災という組織を念頭に置きながら、今回の提言では「標準化」「人材育成」「司令塔機能の強化」という3つを主なポイントとして指摘しています。

■ ポイント①「標準化」
これは、国、地方自治体を通じて、災害対応に対する用語や定義の統一から始まり、命令系統や業務分担、そして実際に現場で使用する機材までを一緒にすることです。今は地方分権の流れの中でこれらも各自治体に任され、自治体ごとの体制があります。
ここ数年見てもわかるように、大災害時には各自治体などから応援に来てもらっており、その時に同じ用語や指揮系統であれば混乱を少なくすることができます。

■ ポイント②人材育成
行政の職員の中に防災のスペシャリストを養成しようということです。省庁再編前は国土庁の中に防災局があり、そこには少数ながらも防災関係が専門という意識を持つ職員がいたと聞きました。しかし現在、防災担当の中心である内閣防災の人事では災害関係部署での経験を充分に積めるようにはなっておらず、結果として災害部門の専門という意識が育ちにくくなっています。
人事制度として防災職を創設することは難しいですが、それと同様の考え方を人事の中に取り入れることや、資格制度を構築して個々人の能力の「見える化」を行い、そういう能力を特に求められるポジションにはそれにふさわしい資格を持つ人間を任用すべき、などの内容を今回の提言に盛り込みました。

■ ポイント③司令塔機能の強化
内閣防災はもっと指令塔機能を発揮するべきです。防災で大事なのは災害時の対応であることは言うまでもありませんが、そのためには平時における準備も同様に重要です。しかし平時の準備を内閣防災が旗振りをして進めているとは言えないのが現状です。
例えば昨年の台風19号では荒川が氾濫寸前のところでした。氾濫すれば数百万戸が浸水するかもしれず、そうなれば日本経済全体に影響を与える、という状況でした。当然、今までの治水対策の延長でいいのか、今までとは違った視点での対策も視野に入れて幅広く検討すべきところですが、こういう根本から考え直していく意識が希薄だと感じます。
ただ、内閣防災の中の「司令塔意識」が低いのは、防災担当大臣に各役所間の調整を行わせる権限がないことも影響していると思います。“お願いベース”で各省庁に話をしてもなかなか動いてくれないのも事実です。この権限を持っているのは災害も含めて危機管理全般を担当している内閣官房長官なので、内閣防災がこの権限を有効に使えるようなシステムをまずは構築することが必要なのではと考えます。

■ ダムの一元管理を決めた司令塔機能
先日政府から、既存の利水ダムの活用による洪水対策が発表されました。ダムには国土交通省が所管の「治水ダム(我々が普通ダムと認識をしているもの)」と利水ダムとして経済産業省が所管している「発電用ダム」、農林水産省所管の「農業用ダム」がありますが、今回初めて、出水期(梅雨~台風シーズン過ぎまで)は国土交通省が治水のために一元管理することができるようになりました。
この利水ダムによる全国における給水調節容量は45億㎥(八ッ場ダムの50個分に相当)で、これは今までの治水ダム全体の容量とほぼ同じです。治水の面を考慮せず設置されているため設置場所に偏りはあると言われますが、簡単に言えば運用だけで治水ダムが倍に増えたと同じことになったのです。
今回これが可能になったのは内閣官房長官の決断で、利水ダムに損失が発生したときには国が補償することにしたことが大きな要因の一つですが、本来は司令塔として内閣防災が先導してもよかったのではないかと私は思っています。

■ 横浜市の有事にも係る司令塔機能
この司令塔機能は大変重要であり、内閣防災はもっと随所で発揮してほしいと思います。
例えば、横浜市では災害時に道路が使えない場合、海(東京湾)からの支援対応を想定して計画策定を進めています。しかし東京湾は世界でも有数の混雑港ですので、平時から関係各所と災害時のオペレーションのルールを作っておくことが必要です。
国交省の港湾局をはじめ、海上保安庁、海上自衛隊、警察、県、他の自治体なども関係してくるだろうことを考えると、やはりこれら関係者が議論のテーブルにつく段取りをするのに、横浜市より内閣防災が適していることは言うまでもありません。

■ 防災担当を機能させる
災害発生時は非常時ですから、少なからず混乱が生じます。しかしその混乱を最小限にし、住民一人ひとりの安全を確保することが防災部局のミッションです。地方自治体も含めてその体制づくりが進展するために提言を出したので、今後とも必要な機能を果たすべき組織になるよう、フォローしていきたいと思います。

※7月3日に防災体制見直しを官邸に提言しました。こちらをご覧ください

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