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フェイクニュースの現状と対策~ 求められるのは情報リテラシー ~

2019年07月01日

トランプ大統領が自身の発言においてたびたび言及していることもあり、日本でも知られるようになった「フェイクニュース」という言葉。
先月、私が事務局長を務める「自民党情報通信戦略調査会」で、この事象の対策を担っている関係者からヒヤリングを行いました。

■ 国民の意思決定に及ぼす影響
世界的に注目されたのは、前回のアメリカの大統領選ではないでしょうか。
例えば、「ローマ法王、トランプ候補を支持」という旨の情報はFacebook上で拡散され、100万シェアにも到達しました。後日、ローマ法王自らこの情報を否定しています。
また、ライフルを持った男性がピザ屋に押し入り発砲した「ピザゲート事件」も、このピザ屋が児童性愛者の拠点であり、ここにクリントン候補者や民主党関係者が絡んでいるというTwitter上のニセ情報を信じたことがきっかけとなっています。
2016年6月に英国で実施された「EU離脱の是非を問う国民投票」でも、事実ではないSNSでの発信が国民の投票行動に大きく影響を与えたのではないかと言われています。その内容とは、英国独立党ナイジェル・ファラージ党首の「EUへの拠出金は毎週3億5千万ポンド(約480億円)に達する」というもの。実はその金額は1億数千万ポンド(百数十億円)であり、投票後にファラージ党首が発言の誤りを追認しています。
このように、真実ではない情報に投票行動が左右されたり、ましてや犯罪が引き起こされたり、それによる被害者が出る状況は看過できません。
日本でも熊本地震の際に、街中をライオンが歩いている写真がSNS上で流れ、ちょっとしたパニックになったと聞いています。
「フェイクニュース」に対しては対策が必要ですが、この対策は簡単ではありません。決め手となるような対策が出てきていないのが現実です。

■ フェイクニュース対策の難しさ
まず、「フェイクニュース」とは何か?実はこの定義から難しく、極めて曖昧で危険な概念だと言われています(ちなみに、欧州では「ディスインフォメーション(ニセ情報)」という言葉を用いることが多いそうです)。意図的でないものも入るのか?一部だけ事実と違うものはどう扱うのか?主観的な言葉や感情的な言葉で読者を誤解させるものはどうか?などなど、フェイクニュースとそうでない情報との線引きは実際に困難と言われています。
規制すればいいのではないか?という声が聞こえてきそうですが、フェイクニュースと断定するのが困難という理由や、自由なインターネットの世界に規制を持ち込むことに慎重な意見も多いのです。
実際に、フェイクニュースを書くのは簡単でも、それをフェイクニュースだと断定するのは簡単なことではありません。規制するにはどこかの機関がその判断を下すことになりますが、その作業は間違いなく追いつかなくなります。

■ 「ファクトチェック」の動き
では何もできないのか?というと、様々な形で多くの人が努力しています。その一つが「ファクトチェック=真偽検証」という作業であり、この種の団体が増えています。ファクトチェックは「事実言明の真実性・正確性を調査し、検証結果を発表する活動」と定義できます。
例えば、先の「ローマ法王、トランプ候補を支持」という情報は、アメリカのSnopesというファクトチェック団体が「真実でない」と判定しています。同時にそう判定した根拠も明らかにしています。
2017年の仏大統領選においては、外交勢力の選挙介入への危機感からメディア横断的なcrosscheckというプロジェクトが立ち上がりました。19媒体が参加し、Google、Facebookも支援したもので、各候補、政党などに関し、結果に大きな影響を与えそうな情報のファクトチェックを行いました。
こうした動きは全世界に広がっており、日本にもファクトチェック・イニシアティブという団体が立ち上がっています。
加えて、信頼できるニュースだけを配信・発信するメディアを指定することにより、ユーザーを守ろうとする動きもあります。この指定を受けているメディアの情報と比較してもらうことにより、個々人が判断できる環境を作ろうというものです。

■ EUにおけるフェイクニュース対策
EUでは日本より一足早く対策を講じています。まず留意すべき内容として①透明性向上 ②利用者の情報リテラシー(自分で適切に判断する能力) ③技術的なツール開発 ④報道メディアの多様性と持続可能性の確保 ⑤ニセ情報の影響する継続的な調査を挙げています。
その上で、プラットフォーム事業者に行動規範を策定させています。偽アカウントは特定して閉鎖すること、利用者が比較検討できるように様々なニュースソースにアクセスしやすくすること、政治広告などに関しては、広告だとわからせる上に誰が出しているか等の透明性を確保すること、そしてファクトチェッカー等が継続的にニセ情報を監視できるようにする、などの内容が含まれています。
また、フェイクニュースを平気で発信するサイトや団体に広告を出さない(つまり、儲けさせない)ということも大事なことだと考えます。
このように多くの関係者が努力していますが、現在のネット上における情報量の多さにすべてが対応できるものではありません。最後はやはり、一人ひとりの判断なり行動に委ねられることになります。
熊本地震の時のライオンの画像も、実はライオンの後ろに見える標識などは英語で書かれていた、つまり、日本での写真ではないとわかるものだったとも言われています。
フェイクニュースのサイト制作者は次のように語っています。「デマや噂なんてこの世に溢れている。それに踊らされるのは個人の問題であり、噂を流した側の責任ではない」。
私たちも収集した情報を整理し、判断する能力をしっかり持って対応することを意識して、一つ一つの情報と向き合っていく積み重ねが必要だということです。