株式市場の再編 ~ 日本市場の魅力を引き出すために ~

2019年06月01日

衆議院財務金融委員長の仕事には、委員会開催までの段取りや委員会議事の他に財金分野の陳情を受けることがあります。
財務金融分野というのは、抽象的な制度やルールの話が割と多く、なかなかなじみがないかもしれませんが、国税にしても、株式市場にしても、私たちの生活や日本経済にも直結する課題を含んでいます。

■ 「四半期決算開示」が負担
先日も関西経済連合会の役員から、金融庁が手がけたコーポレートガバナンス・コード(企業行動指針)について要望がありました。
指針では社外取締役を2人以上導入することなど、78の行動原則を掲げていますが、この時は上場企業に3ヶ月ごとに課している決算発表の義務付け(四半期決算開示)を外してほしいということを強調されました。会員企業への負担が大きな理由で、ヨーロッパはすでに任意になり、アメリカでもトランプ大統領がツイッターで見直しに触れているという説明でした。
早速、金融庁から説明を求めると、この問題については、経団連は開示推進派で、企業の中において主張が一致しておらず、今の状態で四半期開示義務付けの見直しの議論は難しいとの見解でした。また、海外の状況も単純なものではなく、ヨーロッパでは半期(6ヶ月)ごととは言え、日本と比べるとかなり中身の詰まった報告書となっているということや、アメリカでも投資家たちは四半期開示は求め続けるはずなので簡単には廃止できないと言われているなど、多岐にわたった資料をもとに説明してもらいました。

■ 投資家の着目点は「日本経済の状態」
世界を股にかけて展開をしている機関投資家は、日本の個々の企業の伸びる可能性を判断して投資をするというよりは、日本の経済の状態を見て、その株式市場に投資するか否かを判断し、その市場の代表的な会社の株を購入するのだそうです。つまりその市場が信頼に値するかどうかは機関投資家にとって重要な要素となります。
四半期(3ヶ月)とは言え、その間に企業として考慮しなければいけない大きな分岐点を通るということも理屈上はあり得ます。四半期開示をしているということが投資家に対しての企業が真摯に向きあっているという重要なメッセージにもなっているということでした。

■ 一部上場企業が最多数という構造
とは言え、四半期開示が企業にとって少なくない負担となるのなら、選択制という手法もありそうですが、「開示しない選択をした企業」というレッテルを貼られると不利になるので、一律のルールにしてほしいという要望もあるとのこと。
それならば、株式市場の中に四半期開示をしなくても良い市場を新たに作ったらいいのでは?と金融庁の方に質問したところ、その点こそが一つの課題とのことでした。
今、日本にはいくつかの株式市場がありますが、札幌や名古屋などは小さく、実質東京証券取引所(東証)の4つの市場が主なものとなります。東証一部、二部、マザーズ、ジャスダック(この中でスタンダードとグロースに分かれています)ですが、5年ほど前に東京と大阪の2つの取引所が統合し、基本的にはその時の構造がそのままになっています。そのため、一部に2141社、二部に492社、マザーズに286社、ジャスダックに715社が上場しています。数字を見てもわかるように、一部上場企業が市場の中で最多数となっています。
これが何を意味するかというと、四半期開示が負担と感じるような規模の会社も、常に外国人の投資家の意向に敏感にならざるを得ない日本を代表するような大企業もともに、同じ市場に上場しているということです。

■ 市場の魅力を引き出すための模索
質の違うものを一つの「市場」としてくくってしまっているのが現状なので、投資家にとって株式市場としての特色がぼやけて、魅力を大いに減じてしまっているわけです。
しかし、今まで東証一部に上場していた企業が、二部にということになると“格下げ”のようなイメージをもたれかねず反対論が出ることは容易に想像できます。機関投資家の投資の大半が市場への投資という意味合いであるということを前提におけば、株式市場の再編は避けては通れないものだとも思いますが、同時に上場している企業にマイナスの影響を与えないような仕組みも当然必要になります。
3月に東証が論点をまとめ、その論点を中心に現在は金融庁で議論されています。3月のまとめ時には、①市場のコンセプトが曖昧で投資家の利便性が低い②持続的な企業価値向上の動機付けの役割を果たしていない③投資対象としての機能性と市場代表性を備えた指数が存在しない、と整理されていました。
今回の件でも実感しましたが、一つの案件でもその分野のみで終わらず、周辺分野も検討しなければならないということがほとんどです。今回の案件も、コーポレートガバナンスを変えて欲しいという要望でしたが、それに応えるためには市場再編を視野に入れることが必要ではないか、ということです。この株式市場再編の中で、新たな選択肢として四半期開示を求めない市場を創るのも一つの案ではないでしょうか。
今国会も残りわずかとなりましたが、私も衆議院の財務金融委員長として最後まで全力を尽くしていきたいと思います。