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キャッシュレス化への取り組み ~ 消費税対策に終わらないキャッシュレスの意義 ~

2019年04月01日

秋の消費税対策として、今回、政府はかなり大きな予算を組み、様々な対策を進めています。
その一つとしてメディアでも取り上げられていますが、「キャッシュレスポイント還元」があります。経済産業省のチームが中心となり、そのシステムを急ピッチで詰めていると聞いています。
一方、総務省でも「モバイル決済モデル推進事業」を行っています。スマホで支払いができる仕組みを全国に取り入れようとするもので、3月22日に実証事業の請負事業者の公募結果が発表されました。福岡県、和歌山県、長野県、岩手県の4県でそれぞれの地銀と組んで行うことになりました。

■ 日本と世界のキャッシュレス事情
実はキャッシュレス、つまり現金を使わないというシステムに関しては、世界の中でも日本はドイツと並び整備が遅れています。ATMの機械があちらこちらにあり、現金の引き出しが便利なこと、ニセ札が少なくお札への信頼があること、また治安が良く現金強盗などの事件が多くないこと、などが理由として挙げられています。
実際に中国ではスマホ利用者の98%がキャッシュレス決済、スウェーデンでは7歳以上の97%がデビットカード(購入と同時に自分の口座から代金が引き落としされるカード。口座に残高がなければ購入できないので売る方も確実に回収できる)を所持していると言われています。世界の潮流はキャッシュレスであり、ここを舞台に様々なビジネスも展開され始めています。
実際に海外から来ている旅行者などはキャッシュレスが当たり前です。そのなかで、日本では円に両替しなくてはならず不便だという声が出ており、キャッシュレスで支払えるお店に利用が偏る傾向があります。
一方、小売店の立場からは、キャッシュレスだと決済業者が入るため手数料を引かれて手取りが減るという現実があり、現金を望む声が根強いです。会社間で差があるとは言え、手数料率3.24%あたりが標準だと思われます。小規模の小売店からすれば手痛いコストであることは間違いありません。
また、日本では多くの電子マネーの種類があります。コンビニのレジの前に表示してあるロゴの数を見てください。ある調査の平均値ですが、アメリカや中国では一人当たり4枚、韓国では5枚のカードを持っているのに比べ、日本では8枚です。
それぞれがお客の囲い込み戦略をとっているため、例えばSuicaやPASMOなどの交通系電子マネーですら、このお店では使えるけれど、あっちのお店では使えないというのが現状です。
このような状況下で、今後どうしていくかが課題です。

■ 総務省のモデル事業
すでにネット・スマホが普及してきた現在、QRコード決済などを含むモバイル決済は新しい社会インフラとして位置づけられるようになりました。
この社会インフラを活用することにより、前述した外国人観光客対応だけでなく、ポイントサービスなどの利用が可能になったり、何より記録が残るので、経理面の作業量もかなり抑えられます。
新しい社会インフラであるという認識の元に、今回の総務省のモデル推進事業がスタートします。
今回のポイントの一つは地方への拡大。そして二つ目は費用(導入コストと手数料)を抑え、単純に進められるシステムを導入することです。そこで今回は、QRコードを統一化する試みをします。これを日本(JAPAN)の統一QRコードということで、「JPQR」と名付けました。
具体的には決済会社のアプリが入っているお客のスマホでQRコードを読み取り、そこにお客自身が金額を打ち込んで決済をするという方式です。店舗側はQRコードを貼り付けた紙(ステッカー)を用意するだけでよく、すぐにモバイル決済に対応できるため、中国などで広まっています。
現在、日本では決済会社ごとに異なるQRコードを使用しているため、店舗側は決済会社の数だけQRコードを貼り付けた紙を何枚も置かなければならず、現場で混乱する可能性が高い状況です。そこで各社共通のQRコードを導入する実証実験が今回の事業の“キモ”でもあります。今回の実験では、設備の準備がいらないこのパターンに加え、店舗側がタブレット端末に金額とQRコードを表示させて、それをお客のスマホに読み取らせる方式や、お客のスマホにコードを表示させ、それを店舗側の機械で読み取る方式も対象にしています。

■ 「手数料ゼロ」の落とし穴
実は、私が総務省の副大臣の時に、ある企業の経営者から強い危機感を伝えられたことがあります。「キャッシュレスにおける日本での手数料が3%前後である時に、手数料をほぼゼロでやっている外国の会社がある。そこが日本に入り始めたら日本中を席巻してしまう。彼らのビジネスモデルは、日本における購買のデータと取組みを分析し、マーケティングに使えるデータに加工して企業などに売るというものなので、手数料で儲ける必要がない。つまり、日本人の消費性向が丸裸にされていくのが分かっていても、手数料がタダ同然であれば取り入れてしまいます」と。
今回の実験では、総務省から各決済会社に通常より手数料を下げるように依頼をしており、それに協力できるところが参加する形になっているので、これを一つの契機として全国に定着できる仕組みとして確立できればいいと思います。