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なぜ「特例法」なのか ~「天皇制」を安定継続していくために~

2017年06月01日

後半国会のもう一つの課題は天皇陛下のご譲位に関する法案でした。今上陛下も83歳とご高齢になられ、今後も国事行為はじめ、様々な公的ご活動を続けられることが困難となることを深く案じておられます。

■配慮すべき点が多岐にわたる天皇制
活動範囲に関して、今法案の中に「全国」という表現があるのですが、自民党内の議論では、海外でのご功績も素晴らしいものがあるので、国内外、つまり「外」も付け加えた方がよいとの意見が多数出ました。それほどに、様々な国事行為、また祭祀なども含めると大変な活動量であることは間違いありません。
この課題にあたり、天皇制という世界でも希有な制度が今後も安定して継続して行くには、今、何を考え、どこをどう変えていくのかという問題意識を、政治のみならず国民にも投げかけられたのだろうと私は考えています。
これら全体の課題を考えたときに、私は今回の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」は、すべてに応えたものにはなっていないと思っています。すべてを解決し、皇室典範そのものを改正することが理想だろうとは思いますが、時間的な制約を含め、将来の日本を見通せない面があることを念頭に現実的な対応として考えれば、今回の「一代限りの特例法」としての取り扱いは致し方ないものと考えます。しかし、今後の制度の安定継続という面から見た「皇族の減少」をはじめとする課題などは引き続き問題意識を持って議論を深めていく必要があると思います。

■法案の内容
今回の法案では事務的な事柄を決めています。一番大きいのは、今上陛下はこの法律が施行された日に退位し、皇太子殿下が直ちに即位をする、ということです。その施行日はこの法律が公布をされてから3年以内において、制令で定めた日とされることになります。
退位された天皇は上皇陛下、皇后を上皇后へ、上皇に関する事務を遂行するため、宮内庁に新たな役職を新設することなども決める、としています。
その他に、三種の神器などへの贈与税を非課税にすること、また、国民の祝日である「天皇誕生日」を2月23日に変更することなどが定められます。そして皇室典範の附則に、今回の法律とは一体を成すものであるとの規定が新設されることになります。
法案の中身だけ見ますと簡潔ですが、それまでの議論はいろいろなものがありました。今後の議論もこれらのことを踏まえて行われるものと思われます。

■「摂政制度」を活用しなかった理由
摂政制度を活用することによって、退位の問題を回避した方がよいのではないかという意見もあったようです。生前退位ということになると、強制退位や恣意的退位の問題、象徴や権威の二重性の問題なども懸念されるため、天皇の公務を軽減することにより対応すべきという意見です。それに対しては、多くの課題も指摘されました。
制度上は象徴であるが、象徴としての行為を行わない天皇と、制度上は象徴ではないが、実質的には象徴が行う国事行為や公的行為を行う摂政とが並び立つので、国民にわかりにくくなる、また天皇の健康状態が常に世間の耳目を集め、威厳尊厳を損ねるのではないか、ご公務の大半は公的行為であり、国事行為でないため、どれだけの負担を軽減できるのか、またそれが問題の解決になるのかといった課題が出ました。

■なぜ「退位」を慎重に扱うのか
また今回のように退位を進めていく考え方についても、天皇の自由な意思に基づく退位を可能にということにすれば、突き詰めていくと即位後ごく短期間での退位も可能なのか、そして最終的には即位しないことも可能としなければ辻褄が合わないのではないかというところにまで行き着きます。すると憲法で定める世襲制を維持することが難しくなるだろうということも想定しなければいけません。
逆に、天皇の意思に基づかない退位の仕方というのはあり得るのかという視点もあります。実際に、明治の皇室典範を制定した際には、天皇の地位を安定させるために何人の意思も入らないという形式を求めた結果、「崩御」を唯一の皇位継承事由とすることにしています。退位を皇位継承事由とし、しかもそこに何人の意思をも入れないということであれば、ある年齢に達すれば機械的に退位する制度しかないという意見も出ています。
そもそも天皇のご意思を考慮した場合に、天皇の退位という意思に反して皇室会議や国会等の別の機関が退位は望ましくないとの判断をするとは通常考えにくいのではないかとも指摘されています。

■天皇制を安定継続するための「特例法」
とにかく日本の歴史を振り返ってみても、天皇の権威が利用されてきたことは度々あり、この皇位継承に誰かしらかの意思を反映させるとなると、そこから様々な政治的な力が介入してこないとも限らず、そのことにより、逆に天皇制が不安定になることも考えられるわけです。
そのため今回限りの特例法になったのは、現在はそういう状況にはないという認識のもとで、皇位継承者との年齢差、政治的社会情勢、国民の意識などを勘案した末のものであり、今とはおそらく異なるであろう将来の状況の中での判断を、今の時代において想定をして軽々に規定をするのはいかがなものか、といった意見も考慮された結果です。私は今回の形はよかったのではないかと思っています。
何しろ難しい課題です。衆・参の議長をヘッドに、大小含めて全部で10の会派で話し合い、まとめてきたものです。国会では静かな環境で集中してこの法案を成立させたいと、私の所属する自民党の国会対策委員会でも努力をしてきました。
結果、6月9日に成立させることができました。多くの関係者に感謝をすると同時に、今後も安定した制度を求めて作業を進めていかねばと改めて思いました。

 

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