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なぜテロ等準備罪が必要か ~ 被害者を出す前に法律でできること ~

2017年05月01日

150日間の長い通常国会も5月に入り、残り1ヶ月半となりました。
これから後半の国会に入りますが、与野党間で賛否が完全にぶつかる法案が注目されます。
その一つとして「組織犯罪処罰法改正案」(テロ等準備罪とも呼ばれます)が挙げられます。この法案も大変重要な法案です。

■犯罪情報を世界と共有するために
テロ等の犯罪組織、国際犯罪が昨今頻繁に報道されるなか、これらの犯罪を防止するために捜査共助や犯罪情報共有などの国際協力が求められており、それを進めるために、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)が平成15年9月に発効しています。
現在世界で187の国・地域が締結済みで、国連加盟国で見ると193か国中、未締結の国は11か国のみで、その一つが日本です。
日本は世界の大国としても当然この条約を締結し、犯罪防止協力の役割を果たさなければならないと考えていますが、そのためには条約が求めている義務である「重大犯罪の実行の合意の犯罪化を履行するための国内法の整備」が必要とされています。
現状と求められている状態との隙間を埋める役割を果たすのが、今回の法律となります。

■「被害者を出す前」に何ができるか
改正案の中身で一番重要な点は「組織的犯罪集団のメンバーが」「重大犯罪を計画し」「犯罪を実行するための準備を行う」と処罰対象となるという点です。
丸めて言うと、今までは犯罪が実行されて誰かがその被害者にならないと逮捕できないわけですが、この法律によって、テロ集団、暴力団などに属するメンバーが様々なテロや薬物取引などを計画している場合には、実行への準備を実際に始めると、犯罪を起こす前、つまり被害者を出す前に処罰対象として取り締まりができるようになるわけです。
この法案に反対する人々が、「普通の会社員が居酒屋で『上司を殴ろうと意気投合』しただけで処罰される」とか、「花見をしただけで、下見をしたとして逮捕される」とか、「一般のメールやSNS上のやり取りが原因で取り締まられる」などと宣伝しています。そんなことがあるでしょうか?この法案を普通に読んでいただければわかりますが、犯罪組織に入っていない限りは一般の方々が処罰の対象になることはありません。
また、今回の法案で、通信傍受や会話傍受などの新たな捜査手法が導入され、捜査権限が拡大・乱用されるのではないかとの不安も強調されていますが、捜査は今まで同様、刑事訴訟法に基づいた適正な捜査が行われますので、そんな状況にはなりません。
これらの不安をあおるような宣伝が決してこの法案の真実の姿ではないことを、私たちも説明していく義務があります。
今回の法案での対象犯罪ですが、これもかなり絞り込んでいます。重大な犯罪のうち「組織的犯罪集団が関与することが現実に想定されるもの」のみを限定的に規定することによって、懲役・禁固4年以上の676の対象犯罪を277に絞っています。このうち100以上の犯罪はテロの実行に直接かかわるものとなっています。

■警察の努力をフォローする法整備
ここまで今回の「組織犯罪防止法改正案」の概要を説明してきましたが、この法律の必要性はとくに昨今急速に高まっています。
中東の情勢の影響から、フランスをはじめ、欧州ではすでにテロが多発しています。その波はすでに東南アジアまで迫ってきています。東アジア情勢も緊迫しています。犯罪集団もボーダレスで活動しています。
これを防止する側も各国が国境を超えて連携をしていかない限り有効な手を十分に打つことはできません。
今も警察、海上保安庁、自衛隊が日本の安全を守るために最善の努力をしていますが、法制が現状をしっかりフォローしていかなければなりません。幸い日本ではテロが起きていませんが、これは外務努力の上に、治安当局が奮闘している成果です。できる限りの協力をしていかなければ、我々の安全安心を確保し続けることも難しいだろうと思います。
なお、今回、この法案に反対している民進党ですが、その前身である民主党は今回の政府案とほとんど同じ構成で対象犯罪を306にした修正案を国会に提出していました。少なくとも、当時、この法案の必要性を認識していたと私たちは認識していますので、しっかりと内容について審議をしていきたいと考えています。