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「シェアリング・エコノミー」の可能性 ~ 利用者ファーストの規制と緩和 ~

2017年03月01日

「シェアリング・エコノミー」という言葉をご存じですか?
一般的には個人が保有している遊休資産や技術などの無形の資産も含め、これらを活用して収入を得るサービス形態のことを言います。
貸主は遊休資産を活用して所得増となる一方、借りる側も所有することなく、そして通常は一般よりも安い価格で利用できるというメリットがあります。この新しい形態は、ネットサービス、特にソーシャルメディアの発達とともにアメリカのシリコンバレーを起点に成長してきたそうです。

■「民泊」というシェアリング・エコノミー
この形態が成立するには、個人と個人の双方向間の信頼関係がカギとなります。
提示されたものと実際のサービスが違うとか、ルールに則った利用がなされていないなどということが多発しては困りますので。そのため、レビュー評価制度を導入したり、今では業務としてオンライン上の活動履歴からその人の信頼度を割り出すサービスも登場するなど、工夫も進んできています。
レンタカーやペットシッター、車付きドライバーサービス、家事や日曜大工など、世界では大変幅広く展開されています。
そして、今国会で一つの論点となっているのが「民泊」です。
国土交通省から「住宅宿泊事業法案」が提出される予定で、この法案で民泊に新たにルールを設定する一方で、厚生労働省所管の「旅館業法」を緩和しようとしているのです。

■「民泊」の現状
民泊とは、住宅の空き部屋やマンションの空室などに宿泊者を泊めて料金を取るものです。
今までは一定の基準以上の衛生状態やサービスを完備した施設を旅館やホテルなどとして許可をし、これらの施設でしか宿泊者から宿泊料金は取れないという制度で行ってきました。
しかし、海外でのAirbnb(エアビーアンドビー)というサービスが爆発的に普及し、それが日本にも入って来ています。
Airbnbにはその地域で借りられる空き部屋や不動産が登録されていて、ネット上で借りたい人が申し込みをし、双方が了解することによって契約が成立し、料金の支払いが行われます。つまり、現時点では、旅館業法違反の状態がネットによって普及している、現実が法を越えて動いてしまっているというわけです。
これを一方的に押さえつけていくのは現実的ではないとの判断から、現実に合わせて法律を整え直し、一定の秩序のもとで、旅館やホテルが営業できなくなるようなことがないようにしようというのが今回の狙いです。
こうした動きが出てきたのは
・人口減少時代に突入し、活用されていない部屋や不動産がある
・訪日外国人観光客が急増し、客室が不足してきている
・地方にはホテルサービスのない地域がある
・リーズナブルな宿泊料金を求めている人たちがいる
ということが要因だろうと想定されており、ますます民泊は拡大していくだろうことが容易に想像できるわけですが、いいことばかりではありません。

■「民泊」の課題と解決策
騒音、ゴミ出しなどでのご近所とのトラブル、犯罪の温床化への不安、旅館やホテルとのイコールフッティング、また、宿泊者が何らかの被害を受けた場合、宿泊者個人で処理しなければならないことなどの課題があると考えられます。
「シェアリング・エコノミー」は民泊を含めて今後も広がっていくものと思いますし、それを否定はしません。ただ、やはり何かトラブルが起きたときに、その対処をすべて利用者に負わせるというのは、正直なところ、不安です。
ネットで仲介を行う業者は全く責任を負いません。
民泊の場合、利用者は不動産のオーナーと直談判をしなければなりません。中にはこうした問題に関して全くの素人もいて、話が進まないこともあるだろうと想像されます。
この点が課題だと思っていましたが、民泊の普及に伴って、こういう物件のリネンサービスや清掃などをやる「住宅宿泊管理業者」が実際の管理を行っていることに着目して、今回の法案では、この業者が一定の責任を負うシステムになっています。
また、宿泊者名簿の作成・備え付けを義務付けることにもなっています。
私は今回の制度は、なんとか合格点に届いたのではないかと思っています。
今回の制度改正には、旅館・ホテル業界、不動産賃貸業界、そしてネットによる仲介があるので、IT業界が主に関わっていますが、それぞれ不満や言いたいことが十分に収まったとは言い切れない部分もあるようです。
民泊の年間提供日数の上限を180日としましたが、これに対しても多い/少ないとの意見があり、この法案では地域によって事情も違うので、その地域の自治体による条例によりもっと少なくすることができる仕組みも工夫しました。
また、Airbnbのような仲介業者に役所への登録を求めていますが、これに対しても「他の分野では登録などしていない」と反対の声があります。しかし、私はまずこの仕組みでスタートし、その運用の中で不断に情報を集積し、不都合が明らかになれば、次国会で速やかに改正するというのが望ましいのではないかと思います。
いずれにしても、私は利用者の安全安心と健康の確保を第一に、その運用状況を見てその中でできる限り規制緩和を実行すべきだと思います。
今後、いろいろな分野にも「シェアリング・エコノミー」は広がっていくと思われますが、このバランスから離れずに考えていきたいと思います。