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日本の金融政策の現場 ~前 財務副大臣が見た金融政策決定会合 ~

2016年11月01日

財務副大臣の担当の一つとして、日銀の金融政策決定会合への出席がありました。
国会日程との絡みで在任中全ての会合に出席できたわけではありませんでしたが、私が最後に出席した7月の会合では初めて政策変更の場面に立ち会いました。

■誰が日本の金融政策を決めるのか
日本の金融政策は、日銀金融政策決定会合において、黒田総裁や2人の副総裁を含む9人の政策委員が決定します。日本政府、総理が決めるものではありません。
財務省はこの会合において、財政政策を担当する立場から意見を述べるために副大臣が出席します。
政府側からはもう一人、内閣府副大臣が経済政策を担当する立場から意見を述べます。
財務・経済政策からの意見も聞いて、金融政策を決定するという仕組みになっています。
ある政策委員は、「日本の金融政策を9人で背負っているというプレッシャーは大変大きい。人生の中で今、一番勉強しています。会社でこれだけがんばっていたらもっと出世できたのに…と妻に言われますよ」とおっしゃるくらい、真剣に、全力で取り組んでいました。

■金融政策の大転換
今年の一番大きな政策変更は、日本で初めて採用したマイナス金利政策の導入ではないでしょうか。
このマイナス金利は、金融機関が日銀の当座預金に今まで以上にお金を預けた場合、その増加分の一部にかかってくるものです。
逆に言うと、今までの当座預金額には+0.1%の利子率が引き続きプラスの設定をされているので、私たちが金融機関に預ける通常預金の利子率がマイナスになる、つまり、預けておくとお金を取られるということにはなりません。
金融界に大きな衝撃を与えた政策について、9月の金融政策決定会合ではこれまでの取り組みの総括的な検証が行われました。この検証の大きな柱は、
①金融緩和の効果と物価上昇率2%に達しない理由
②マイナス金利の効果と影響
の2つです。

■マイナス金利政策の検証
①については、「量的・質的金融緩和」は実質金利の低下を通じて経済・物価を好転させ、デフレではなくなったという効果はあった。また、公約である2%が実現できない理由は、原油価格の下落、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国発の市場の不安定化である。と整理しています。
確かに消費の力強さが戻っていないのは、当初の予想に反していると私も思います。5%から8%への税率アップの後遺症と同時に国際環境が落ち着かない、もっと言うと、テロの不安が高まっているということも影響していると思います。
特に、企業の投資などは、資金の回収まで見通せないと進みません。中国経済の減速だけではない、様々な要因があるのだろうと思います。
②については、長短金利の押し下げに効果があり、貸出・社債金利の低下につながっている一方で、金融機関収益を圧縮しており、国民にとっても保険・年金などの運用利回りが低下することにより、マインド面を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある、としています。
元々「イールドカーブ(短期・中期・長期それぞれの利率をつないでつくられるカーブ)」を下げる狙いで行われたマイナス金利ですが、やや下がりすぎたという声もありました。
これらの整理を受けて、日銀は2%の物価安定目標は堅持し続けることを公表し、できるだけ早期にその実現をするための新たな方針を決定しました。

■2%の物価安定目標到達への方針
まずは短期政策金利では、▲0.1%、長期金利は10年物国債金利で「概ね現状程度(ゼロ%程度)」を操作目標として示し、それを実現するための手段を取るということです。
今までは、どういう方法でどれほどの規模で金融緩和をしていくかを示してきました。今回は金融市場調節方針として、従来のマネタリーベース増加額目標にかえて、上記のような短期政策金利と長期金利操作目標を決定して、そこに誘導する方針を立てました。
同時に、物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースは拡大していくという今までの決意を改めて強調しました。そのためには、必要であれば追加緩和の措置を取るという発表もしています。
今までとは次元の違う様々な手は打ってきていますが、デフレを完全に脱却するための目標達成には、正直日銀も苦労していると思います。
当初の思惑通りに行っていないところも多々あります。しかし、この金融緩和を実施していなかったとするならば、現在の経済状況はもっと酷いものになっていただろうと私は思います。今までの黒田総裁の取り組みを、基本的には評価をしたいと思います。しかし、まだまだの面もあります。
引き続き強力に脱デフレ政策を推進していただき、再び日本経済にしっかりと活力が湧く環境に戻るよう、私たちも努力したいと思います。