アベノミクスの目指すもの ~平成28年度予算のミッション ~

2016年04月01日

先日ある証券会社が主催したセミナーが、世界の中央銀行関係者、機関投資家を対象に開催されました。メインのスピーカーはノーベル経済学賞を授賞されたポール・クルーグマン教授で、セミナーの翌日に官邸で行われた国際金融経済分析会合で述べたと報道されている内容を発表されていました。そのあとを受け、私が日本の政策、アベノミクスについて講演しました。
私の発言の中身は、今の政府の公式見解ですので、ここで概略を紹介したいと思います。

■「三本の矢」のプロセス
平成24年12月に第二次安倍内閣が発足して以来、デフレからの脱却、経済立て直しを目指してきました。その方法をわかりやすく三本の矢という形で示してきました。
第一の矢「大胆な金融政策」では、日銀の量的質的金融緩和に、この2月からはマイナス金利政策まで導入して、目標として示している物価上昇率2%を目指してきました。
第二の矢「機動的な財政政策」では、平成25年1月、に10兆円規模の緊急経済対策を打ち、流れを作ってきました。
第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」ですが、規制改革、構造改革、リスクマネー供給を推進し、設備投資を増やす上に、生産性を向上させることによって日本経済の立て直しを目指してきました。

■安倍政権3年間の歩み
政権発足後3年がたち、それらの取り組みの状況を、私たちは「デフレ脱却まであと一歩まで来ている」と説明しています。
名目GDPは安倍内閣発足時と比べ27兆円増加しています。企業収益は過去最高の水準に達しています。中小企業の倒産は2割減るなど、企業を取り巻く環境は改善しています。
雇用の状況も正社員の有効求人倍率が統計開始以来最高の水準となっています。
昨年は17年ぶりの高い賃上げが実現しました。今年は昨年ほどの高さはありませんでしたが、3年連続ベースアップという結果となりました。これは批判も受けましたが、それでもなお、安倍総理が直接産業界に対し賃上げ要請を続けてきたことが背景にあります。

■成長戦略に関わる改革
今年度の国・地方の税収の合計額は、4年前と比較して消費税の増加分を除いても、約13兆円増加すると見込まれています。プライマリーバランスの赤字も、歳出抑制などにより安倍政権以前と比べると半分以下、10兆円余りにまで減少しました。個々の点では海外の影響などもあり、全体としてデフレ脱却・経済再生に向けた取り組みは前進しています。
そして成長戦略に絡む構造改革に関しては、いくつかの例をあげます。
まずは農業分野です。60年ぶりの大幅な構造改革と規制緩和を行い、農業生産法人など多様な担い手による参入を促すようになりました。『攻めの農政』で、40歳代以下の新規就農者が年間2万人を超え、この8年間で最も多くなりました。昨年の農林水産物・食品の輸出額は7000億円に達し、過去最高を3年連続で更新しています。
法人実効税率についても、課税ベースを拡大しつつ20%台にしていきますし、企業と株主の関係や企業の取り組みの方向性などを示したコーポレートガバナンスの取り組みも進展させています。
外国人観光客も3年前の2倍以上となり、旅行収支も黒字。外国人観光客の「爆買い消費」は年3兆円を軽く超えるほどになっています。
この4月から始まった電力自由化。消費者の8割が電力会社の変更を検討しています。平成32年には発送電分離が実施されることにもなっています。
そしてTPPです。日本のGDPを2.6%押し上げ、80万人もの雇用を生み出す効果が見込まれています。日本のマーケットが縮小していく代りを、これら参加国のマーケットに見つけていくことも可能になるでしょう。

■「一億総活躍社会」とは
これらの施策とその結果を受けて、昨秋に新・三本の矢を発表しました。「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という目標を掲げ、これらの達成を通じて「一億総活躍社会」を実現していくというものです。これらは、前月の時報紙でも触れましたが、単なる社会保障政策ではありません。働きたい人には働き続けてもらい、人口減少に伴う労働者不足を解消していくという経済政策につながる施策でもあります。
分配するものがなければ分配できないわけで、「成長と分配の好循環」を生み出す経済社会システムが安倍政権の目指す「一億総活躍社会」です。

■「一億総活躍社会」実現のために
賃上げ、下請け企業の取引条件の改善、年率3%を目途に最低賃金の引き上げなどを官民で取り組みます。同一労働同一賃金の実現、非正規雇用労働者の待遇改善も急務です。
人工知能、ロボット、IoT、宇宙、バイオ、海洋など研究を支援し、iPS細胞などの実績をあげて、「世界で最もイノベーションに適した国」としていきます。
また妊娠から出産、子育てまで、切れ目のない支援を行います。若者の就職支援、正社員転換、不妊治療、産前産後の年金保険料免除などです。50万人分の保育の受け皿確保、それに必要な9万人分の保育士確保、幼児教育の無償化、多子世帯、ひとり親家庭への重点的支援などの子育て支援策を進めます。
10万人以上いる介護を理由とする離職者をなくすため、特養、サービス付き高齢者住宅など、多様な介護の受け皿を2020年代初頭までに50万人整備します。そのための介護人材25万人も確保しなければなりません。そして65歳を超えても働きたいという7割近くの高齢者が「生涯現役」でいられるために、多様な就労機会を提供したいと思います。

■平成28年度予算のミッション
今の日本が直面する大きな課題である人口減少社会に真正面から向き合い、財政・経済政策に社会保障政策もリンクさせて、打ち出しているのが今の新・三本の矢です。世界経済、金融の動きにも柔軟かつ素早く対応していかねばなりません。そして最終的には財政健全化の観点から決めた財政規律を守っていくことも求められます。この4月からの平成28年度予算は、これらの動きや考え方を実現していくための予算としてしっかり執行していきたいと考えています。