96兆7218億円の実態 ~ 財務副大臣から見た予算編成 ~

2016年01月01日

平成27年12月24日に、平成28年度一般会計当初予算案を安倍政権は閣議決定しました。総額96兆7218億円で、今年度の当初予算よりも3800億円ほど増えた案となりました。この予算案は平成28年1月4日に召集される通常国会の予算委員会で審議され、3月31日までに衆参で可決され、予算として成立し、4月1日から執行されることになります。
今回私は、この予算編成担当の財務副大臣として関わらせてもらいました。
予算案の閣議決定に際して、この予算案に関し様々な報道がなされていますが、現場に居た者として今一つ実際の状況が伝わっていないのではないかと感じます。報道では「メリハリがない」「膨張が止まらない」「財政健全化に遠く」などの見出しが躍っていますが、実態を適切に示したものとは言えないのではないでしょうか。

■5年後を見据えた予算編成
多額の債務残高があるのは事実ですし、来年度一年たつと残高が増えてしまうのも事実です。これに対応するために、昨年6月に政府は、平成28年度から32年度までの期間を対象にした「経済財政再生計画」を発表しています。計画最終年度の平成32年度、国・地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目標としていますが、3年目の平成30年度までの中間目標として、プライマリーバランスの赤字幅をGDPの1%以内に抑えるという数値をそこでは示しています

■ルールに則ったメリハリのある予算編成
まず、財務省が予算編成をする際の指針はこの「経済財政再生計画」を含んだ、昨年6月に経済財政諮問会議から出された「骨太の方針2015」です。
次は11月の終わりに内閣府がこの骨太の方針を予算編成用にまとめ、これも閣議決定が必要な「予算編成の基本方針」があります。計画や方向性に沿って編成するように、つまり好き勝手にはするなという歯止めの一つとなっています。
例えば、今回これらの計画や方針に含まれた数値には「社会保障費用の増加幅は3年間で1.5兆円以内」というものがあります。今の制度で歳出削減の手を何も打たなければ、年間に6700億円、つまり3年間では2兆円以上増加してしまいます。それを毎年1700億円以上圧縮していくということです。今回は診療報酬の見直しで、診療報酬全体で0.84%減にするなど、社会保障費用の増加幅を4400億円ほどに抑えています。
また、「それ以外の政策経費に関しては、3年間で1000億円程度」というものがあります。海上保安庁、税関、入管などのCIQなど、治安関連にかなり強い需要がある中で、今回は300億円程度に抑えています。上記の治安関連のほか、訪日外国人観光客が増加しているので観光関連の予算は倍増。
途上国援助(ODA)も今年の日本での伊勢志摩サミットや昨年のユネスコでの南京事件の記憶遺産登録時の状況等を鑑みて、戦略的に活用するよう17年ぶりに増額に転じています。
オリンピックを見据え、スポーツ関連予算も34億円も増やし、324億円(前年度比12%弱増)になりました。
TPP対策として、農業の体質改善、転作支援などにも予算をつけていますし、また、地方創生に関しては新たに「新型交付金」1000億円を創設し、地方自治体の取り組みを後押ししていくことになっています。これら全体の政策を束ねているのが「一億総活躍社会」という考え方です。
つまり、この考え方に沿ってメリハリをつけ、それでも300億円増に抑えている予算の姿だと思います。その結果、国債依存度はリーマンショック前まで戻り、平成20年度に次ぐ低さにまで戻ってきました
補正予算を直前に組みましたが、この補正予算の額も平成27年度のプライマリーバランスの赤字をGDP比で3.3%以下の金額に抑えるという財政規律の枠内で行って、約3.5兆円規模という金額になっています。入ってきた税収の上ブレを無節操に使っているわけでは決してありません。今年度、赤字国債の発行予定額を4500億円は圧縮することになります。つまりルールに沿って行われているということです。

■シナリオを実現するための布石
12月まで民主党政権だった平成24年度と比べ、安倍政権になり税収は15兆円以上伸びています。地方の税収も順調に、しかもかなり伸びているので、来年度は地方交付税として国から地方へ流れる金額は2500億円も減ります。この点も「税収増頼み」と批判されていますが、今の安倍政権はそこも含めてシナリオとビジョンを描き、そのシナリオを現実のものとするために最善の道を取るべく模索を続けています。単に税収増を天に祈るだけではなく、金融・財政政策、そして成長戦略としてインフラ輸出、攻めの農業、TPPシフトなど、様々な努力をし、同時に雇用環境改善に向け、子育て支援、介護離職ゼロなどを打ち上げて協力を求め、目標に向けて進んでいます

■二兎を得る
歳出を抑えるだけですべてうまくいくならともかく、それでは全体の経済のパイが小さくなり、今の経済ルールでは財政健全化への道はちっとも近くならないことは近い過去に経験したのではないでしょうか。「経済の好循環」と「財政再建」という二兎を追って二兎を得るという大変難しい命題を突きつけられているなかで5ヵ年計画の1年目として、今のところその線上に乗っている予算となったのではないかと私は感じています。

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