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国家づくりの北極星~政府の考える「国土のグランドデザイン」~

2014年03月01日

今年の3月末をメドに骨子をまとめたいということで、現在、国土交通省内において新たな「国土のグランドデザイン」構築のための議論がなされています。
平成20年に政府は、国土形成計画を策定しましたが、その後日本を巡る環境は大きく変わって来ています。厳しさを増すその変化の中、将来の日本づくりの指針とするために国土交通大臣のもとで、今後の国土・地域づくりについて中長期(概ね2050年)を見据えたグランドデザインを作成することとなりました。
「ゆたかさ」とは、「しあわせ」とはといった、今まで大切であったにもかかわらずなかなか国土計画の議論に上ってこなかったテーマも、今回は主要なテーマとなっていく予定です。
国づくりの理念もしくは思想といった部分です。私は、ここまで踏み込んでいくということを評価したいと思っています。
現状に対応しながら出来ることをやっていかねばならないのはもちろんですが、「あれが日本のめざすべき国家像だ」という“北極星”のような歩むべき方向を指し示すものがあることが重要だと思います。
懇談会を開催し、2月末現在で8名の有識者からご意見を伺っています。
行政としては決して得手な分野ではない上に、有識者の方々もいろいろな視点から様々な次元で提案されるので困難な作業になろうかと思いますが、すでに国土交通委員会はじめ、政府内でも注目されていますので、よいものに取りまとめしていきたいと考えています。
今回は、その中の論点のいくつかをご紹介します。

■「コンパクトシティ」という考え方
人口減少、少子高齢化、財政圧縮などの要因が今後ますます大きくなっていく中で、「縮んでいく街づくり」「コンパクトシティ」「介護機能や公共交通機関の集積と高品質化」がキーワードとして指摘されています。
人口減になり、都市は小さくなっていくので、うまく都市を畳んで様々な機能を効率よく提供できるようにして全体の行政コストを下げようというものです。
このコンパクトシティのモデルは富山市が全世界的にも注目されています。
しかし一方、都市部に住む人を集めるということは、都市部以外に住む人の数が減少し、コミュニティが成り立たなくなることも当然考えられます。そうした地域にかける予算を少なくしていくのはいいのかどうか。
これは、実は、「国土の均衡ある発展」という、ある種“絶対的前提”であったものを超えなければ実現が難しい内容になろうかと思います。
このテーゼを捨てるのか。

■「不便を肯定する」という考え方
しかし、同時に私たちが考えなければならないのは、「不便になっていく」地域で生活をする中で、「ゆたか」で「しあわせ」な生き方というものを模索はできないだろうか、という問いではないでしょうか。
お金を稼ぐことが結局は「ゆたかさ」「しあわせ」には直結しないことを、私たちはバブル時代を通じて実感したと思います。バブル後に私たちが求めていくべき価値観や、東日本大震災を体験してより深く私たちの心の中に息づいてきたものがあると思います。それは家族であり、絆であり、「平凡な日常」であり、一食一食の食事であり、そして「命の強さ」もその一つかもしれません。

■「自然災害と共存する」という考え方
また、別の防災・減災の観点からは、災害が起こる場所には住まわせないということを強制できるかどうかという論点もあります。毎年多くの災害を経験する日本で、災害対策は外せません。
今までは街が広がってきた時代だったので、空いているところにはどんどん家や建物が建ちました。天然の遊水池機能を果たしてきた地域など(だからこそ空いていたのですが)、開発され住宅が建ちました。個人所有の土地なので規制が出来ません。
そういう土地は当然、大雨時には水があふれることになります。すると、「堤防の高さを上げろ」ということになり、今度は「公費」で工事をすることになります。そして、今度はその影響で下流の水があふれ、またそこに堤防を建てると次にはその下流が・・・という繰り返しを、みなさんの税金でやってきたこともあります。
人口減で街が小さくなる中で、「洪水になりそうな所には住むな」「崖崩れが起きそうな所には住むな」と言えるのかどうか。
危険が想定される地域に人がいなければ、かなりの行政コストを引き下げることができます。その一方、危険がある地域の不動産価値などは大幅に下落することにもなります。

■山積する課題
そして日本と世界を見渡しての物流強化の議論もあります。
これはアメリカ西海岸からの大型貨物船が日本ではなく、釜山・上海などを目指し、日本海ルートを通るようになったことから、日本海側の施設の強化と太平洋側と日本海側とのルートの拡充をすべしというものです。
また、インフラ、社会資本の老朽化対策も喫緊の課題となっていますが、公が担う役割、私で担った方がいい分野など、このインフラ整備もどう位置づけていくか。
このほかにも、エネルギーや産業振興という国土交通省が通常は直接の担当ではないテーマもやはり必要となります。
論点は尽きませんが、時間的には制限があります。
まずは有用なたたき台、議論を深めていくガイドラインとなるような骨子づくりをめざしていきたいと思います。