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日本版NSCを機能させるために~政府に求められる情報収集力・判断力~

2013年12月01日

■防空識別圏とは
中国が東シナ海周辺海域に防空識別圏を設定しました。防空識別圏とは、通常なじみがない用語ですが、自国の領空に接近する航空機を識別し、国籍不明機の領空侵犯を防止するために、領空(海岸線から12カイリ・約22km)の外側に各国が自主的に国内法で設定するものです。
航空機はスピードが速いので、領空への侵入後の防御は難しいのです。
通常は管制上の観点から、民間の航空機などは出発地と目的地の政府に飛行計画を提出して、身元を明らかにして飛行します。
事前通報なく入ってきた航空機には航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して近づき、国籍や目的を明らかにします。
日本では法律でなく、防衛相の内規「訓令」で定めているだけです。また、この防空識別圏を設定しても、外国航空枠の飛行を制限したり、義務を課すなどの管轄権は認められているものではありません。
国際法上の規定はないものでありながら、ではなぜ今回はこんなにも問題となっているのか。

■中国の防空識別圏の問題点 
日本政府は、駐日中国大使に対して以下の点に関して抗議しています。
防空識別圏は先述した理由で領空の外側、公海上の空域にも設定されます。公海上の空域は飛行自由が原則ですが、今回の中国の行為は一方的に自国の手続きに従うことを義務付け、これに従わない場合の中国軍による「防御的緊急措置」に言及し、飛行の自由を不当に侵害するものになります。
他国に何らかの行為を強制できるものではなく、国際規範に反するものです。
そして何より、今回中国が設定した空域は、我が国固有の領土である尖閣諸島の領空をあたかも「中国の領域」であるかのごとき表示をしており、日本は到底受け入れられません

■日本政府のスタンス 
この中国側の「防御的緊急措置」が具体的に何をどのように示しているのかが不明であったため、また今回の防空識別圏設定の対象が、尖閣諸島を領有している日本であろうことが推測されたため、当初、日本のJAL、ANAなどの航空4社は飛行の安全確保のため、その設定の合規範性はさておき、中国側に飛行計画を提出しました。
しかし、極めて異常であるこの設定に対し、政府と民間の対応を一致させるべきだということで、国土交通省が各航空会社に対し、飛行計画の中国への提出をやめるよう要請し、各社はそれを受け入れました。
今後日本は中国に対しこのような措置の撤回を求め、今までのルールを順守すると同時に、国際民間航空機関をはじめとする国際機関で今回のように勝手なことが許されないよう、空域における秩序を維持するための方法論を協議するイニシアティブをとっていくなど、今後の対応を毅然と行っていく必要があると思います。

■日本版NSCを機能させるために
それと同時に、今回も国家安全保障会議(日本版NSC)の必要性を強く感じました。
森本前防衛大臣は尖閣国有化後の情勢を見て、「中国が今回の手段を取ってくることを想定はしていた」とコメントしていますが、これら想定されうる状況に対しての日本の戦略を常日頃から練り上げていく必要があります。
今回に関しても、当初日本の航空会社が中国に飛行計画を提出しましたが、将来的には、この国家安全保障会議で、様々な情報からいち早く相手の「狙い」と「踏み込み方」を判断し、飛行計画を提出せずとも大丈夫だという指導ができるようになるべきだと思っています。
その分析を行うために必要なのは情報です。国家機密を保護するための法整備がなされていないと、諸外国は核心情報を提供しない状況になっています。
CIA(アメリカ)やKGB(ロシア)、KCIA(韓国)などの諜報組織を持っていない日本は、これらの提供がなければ国家安全保障会議の機能も十分に発揮できません。

■なぜ特定秘密保護法案を急ぐのか 
一方で、今年の1月に起きたアルジェリアでの人質事件や今回の防空識別圏よりももっと深刻な状況も、いつ発生するかわかりません。
多くの方々から特定秘密保護法案の審議に関して「なぜ急ぐのか」というご質問をいただきますが、緊迫し、いつ何が発生するかわからない国際社会の中で、日本の国益を推し拡げ、国民の生命と財産を守るという責任を負う立場としては、やっと12月4日に発足する国家安全保障会議を十分に機能させなくてはならないと思います。
この法案審議では、与党も国民の様々な意見を聞くべく、法案修正を12か所も行いました。その中には、民主党の主張も取り入れてあり、衆院の本会議の討論で、民主党の代表の討論者からこの点に関しては高い評価もいただきました。
結果として、自民党、公明党、みんなの党、日本維新の会の4党で、この修正案を国会に提出することができました。
法案の修正に応じると、「(修正個所があるということは)まだ十分に法案が練れていないじゃないか」という批判が起きますが、今回はそれを甘んじて受けても、少しでも各党の主張を取り入れ、心配や不安を少なくしたいということで、法案の担当者は作業を進めました。

■信頼関係の上に成り立つ政治 
前回の小紙でも述べましたが、完全完璧な法律はありません。
権力者が強引に、また確信犯的に悪意を持って特定秘密保護法案を運用しようとすればできるのかもしれません。
だからこそ第三者機関も想定していますし、何より日本は4年に1回選挙があります。そういう政権を選挙でひっくり返す健全さが国民にあれば、大丈夫ではないかと思います。
政治は国民と信頼関係がなければ機能しなくなります。安倍総理は「特定秘密の9割は人工衛星からの映像であり、今回の法案により国家機密が増えるということはない」と答弁しています。
私は最終的には総理とこの政権を信じていただきたいと思っています。
と同時に、今懸念されている点を決して忘れず、緊張感を持って運営をしていくことが政府にとって大事であり、国民も一過性のものに終わらせず、こういう法律があるんだということで、今後も意識し続けていただくことが、よりよい緊張感をつくり、日本のためにもよいのではないかと思います。