日本版NSC設置の背景 ~政府が果たすべき義務~

2013年11月01日

「日本は外交が本当に下手だ」とか「日本には外交戦略がない」などの声をよく聞きます。
これらの声に対して真剣に考えた答えが、今回の臨時国会に提出された「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」です。つまり、常日頃から外交・安全保障政策に関する情報を集め、中長期の戦略を打ち立てていく司令塔を創るということです。
民主党政権は必要性を指摘していただけでしたが、安倍政権は実際に立法して機能させることを決めて、国会に提出しました。

■日本版NSC設置のきっかけ
今年1月にアルジェリアで人質事件が発生した際、NSCの必要性を痛切に感じました。外務省、防衛省をはじめ、各省庁は全力で現地などの情報を収集し、官邸に伝えましたが、官邸内に対応するスタッフが少ないため、それらの情報を分析し、処理することが大変だったそうです。
それだけでなく、情報の共有化がされていなかったり、そもそもそれらの情報の真偽の判断を下すのも苦労したと言われています。

■日本版NSCの体制 
今回の法案では、専門スタッフを中心に自衛官10人を含む60人規模のチームにすることになります。専門スタッフには情報の処理を含め、業務に精通することが必要だと思います。
NSCの中核は総理、官房長官、外相、防衛相からなる「4大臣会合」です。少なくとも2週間に一度は顔を合わせ、認識を共有し、在日米軍再編、領土問題、対中・韓・北朝鮮を含む東アジア情勢などの対処方針を決めていきます。
そしてここのスタッフは各国のNSCの担当者とも信頼関係を構築していきます。また、国内の省庁の縦割りの壁もNSC事務局が機能することにより乗り越えていきます。「あて職」では到底間に合わないポストであることは言うまでもありません。
そのため、国家安全保障局を創り、ここの局長は現在すでに置かれている内閣危機管理監と平素から緊密に連携し、危機管理対応能力を高めていきます。

■日本を囲む「情報戦争」の現状 
このNSCが有効に機能していくには、情報入手が必要です。
アメリカのNSCがEUの首脳を盗聴していたと報道され、大問題となっていますが、裏を返せば、国際社会においてはここまで無理をしてでも情報を取るための戦いを展開しているということが明らかになりました。みな、自国の利益と安全のためです。
日本にはアメリカのCIAにあたる組織もありませんし、活動もしていません。その状況下、容赦ない外交の世界で我が日本の安全と国益を守らねばならないのが日本政府、政治の大きな役割の一つでもあります。だからこそ、従来アメリカなどから提供してもらっている情報に加え、各国からも情報を提供してもらう仕組みを作っていく必要があります。
しかし、「日本に情報を提供したら、情報が筒抜けになってしまった」となったら、どの国も情報提供をしてくれません。だから情報提供国は日本に対して信頼できる体制を求めています。

■なぜ特定秘密保護法案か  
そのため、今回政府は、このNSC法案とともに「特定秘密保護法案」を国会に提出しています。
この法案における特定秘密の対象については、①外交 ②防衛 ③スパイ防止 ④テロ対策の4分野に限定しています。
ちなみに、議論となった尖閣諸島漁船衝突事件のビデオ映像、TPPの交渉内容、それに首相の動きなど、これらの程度のものは特定秘密にはなりません
しかしながら、この法案に関しては「“特定”の内容があいまいで、しっかり特定されていない」「マスコミが委縮して、知る権利が害される」など、懸念の声が上がっています。
政府はこの法案で不当に言論を弾圧しようと考えているわけではまったくなく、また日本から戦争を志向しているわけでも決してありません
しかし、先述したように、こちらから仕掛けなくても、国際社会では様々な脅威が日本を襲ってきます。それらに対抗するための体制づくりは、国民の生命と財産を守るという政府の義務です。
法律にしても、制度にしても、完璧というものはあり得ません。今回もこの義務を果たし得る体制づくりを行いながら、多くの人が懸念する点をどう最小限に抑えていくか。ここが一番難しいところだと思います。
与党でも、知る権利を明記したり、政権交代により新しい政権が“特定”の中身を検討できるようにしたりして緊張感を持たせ、恣意的な運用ができないようにするなどの工夫や努力をしています
国会でこれらの点が質疑されていくと思いますので、みなさんもお一人おひとりが考えていただきたいと思います。