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3つの通商交渉と日本の成長戦略~国益を守るための戦略と交渉~

2012年11月01日

■まずは成長戦略の策定
今月中旬から、日本が関係する3つの通商交渉が動きます。
一つは環太平洋経済連携協定(TPP)。もう一つは日中韓自由貿易協定(FTA)。そしてASEAN諸国を中心とする16カ国による包括的経済連携(RCEP=アールセップ)です。また、これ以外にもEUやカナダとの間でEPA交渉が行われる予定もあります。
とても簡単に言えばFTAはモノや商品の流通をターゲットにした協定で、EPAはそれに加えて、人の移動、知的財産権、投資、電子商取引などまで対象を広げ、より親密な関係強化をめざすものと言えます。
TPPばかりが強調されていますが、いろいろな動きがあるのです。
だからまず日本の成長戦略を策定し、それに基づいた通商交渉の方向性を打ち出し、それぞれの交渉を丁寧に進めるべきです。つまり、大戦略の元に、それぞれの交渉をまとめ、それぞれがお互いを補強し、日本の国益を高める最大の努力をするのです。
今回の経済対策を見てもわかるように、何の脈略もなく、場当たり的に、研究開発に単発予算をつけたり、船を買ったりというのでは意味がありません。また、500兆円と言われる日本のGDPの規模に対して予備費から最大4,226億円しか出せない対策では、インパクトがなく「形だけのパフォーマンス」と言われても仕方ありません。
必要なのは、中長期の成長戦略とそれに沿う対策です。

■動き出すアジア
話を通商交渉に戻します。
日中韓のFTAは、元々あまり乗り気でない態度だった韓国が、10月下旬に交渉開始に向け動き出しました。
一方の中国は11月8日に共産党大会が始まることもあって、今のところ態度をはっきりさせていませんが、「日本の現政権とは話をしない」と公言している状況なので、進展は望めないと思われます。
いずれにしても、尖閣諸島、竹島の問題が持ち上がり微妙な形になっていますが、領土に関する話と経済は別、との立場です。
このFTAはWTOのルールに則り、RCEPより高いレベルでの協定を想定し、三国と利益を享受することを目指しています。しかし同時に、それぞれ三国の事情も配慮することになっています。そして三国間のFTAがRCEP推進の原動力となることも期待されているものです。
個人的な見解ですが、「アジアの成長」を取り込むというのが主たる目的であれば、三国間のFTAよりは16ヶ国のFTAであるRCEPの交渉のスピードを速めるべきだと考えます。RCEP16ヶ国はタイ、インドネシア、フィリピン、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、シンガポールのASEAN10ヶ国に加え、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、韓国そして日本です。この枠組みは高度な自由化を目指すTPPと違い、例外規定を認める方法で進めていく予定になっています。
中国、インド、韓国というアジアの主要国が入りますから、アジアを考えたときに基盤となるメンバーです。
ただ、TPPと違うのは、アメリカが外れていているということです(つまり、アメリカが「アジアの成長」を取り込めない)。

■TPPの新しい動き
一方でTPPにも新しい動きがありました。先日カナダとメキシコが新たにTPPに参加が認められましたが、それは「今までに決まったことは一切変更しない。この2ヶ国には拒否権は認めない」という条件付きだったと日本農業新聞が報道しています。
つまり、現在の9ヶ国で決めたことには一切逆らえない、不利な立場を許容するなら参加を認めるということです。
野田政権でTPPの早期参加の理由としていた「ルール作りへの参加」はすでに実質不可能だということが判明しました。しかし、ほとんどと言っていいほど、こうした政府に都合の悪い事実は公表されません。
TPPに関しては、現場が動き新しい局面を迎え、それに対応した新しい動きが出ているはずですから、これらを国民に示し、すべての状況を明らかにしたところで国民一人ひとりがこの問題を真剣に議論していく場を作るべきです。
参加する・しないにかかわらず乗り越えていかねばならないハードルが待っています。ならば、それを国民一丸となって乗り越えて行ける環境づくりが必要です。

■大事なのは交渉の方針の組み立て
特にTPP交渉を考えた際には、より求められますが、このような通商交渉には日本が何を求めていくか、どこまで妥協し、どこは妥協できないかといったきっちりとした方針をまず組み立てることが大事です。
何度も言いますが、その指針となるのが日本の成長戦略です。その指針がないなか、どうやって交渉しようというのでしょうか。
また「近いうち」に解散する政権と外国がまともに交渉するのでしょうか。
こういうことも含め、国益を考えると、一日も早く国民に信を問うべきだと思います。

 

PDFはこちらから(「今月の主張」のほか、活動の報告・ご案内なども掲載)→12年11月号 NO113-1