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都市部と地方の関係の重要性について~日本復興にあたってのヒント ~

2011年05月01日

今回の災害支援について、岩手県内における内陸部と沿岸部の関係も大事であり、また被害を免れた沿岸部同士の支え合いもこれから重要視されてくることになると思います。しかし、同様に全く異質な都市と地方の協力、支え合いも実は大変重要であると考えます。その関係は、地方の選択の幅を大きくするものです。同時に都市部にとっても、一方的に支援するというものではなく、そこから多くのものを得ていくという関係でもあります。

都市部と地方の支援関係
一番わかりやすいのは、金と人です。地方は過疎地域であり、貨幣経済は縮小してきているところが多いので、募金活動に象徴されるような金銭的支援もバカにはできません。
また、ボランティアに見るマンパワーも都市部にはあります。このマンパワーは地方には圧倒的に不足しています。同時に、現場が不足している都市部においては、何かやりたい人達とボランティアをすることを許される環境があり、生きがい、やりがいを求める都市部の住民はその機会を求めているとも言え、両者にとって望ましい関係をつくる可能性があると思われます。これが都市部と地方の最もわかりやすい協力のありかたではないでしょうか。
次に産業の点からみると、被災地である地方は、一次産品の生産地です。一方で都市部は消費地です。都市部は、信頼のできる商品を購入でき、地方はそのことにより産業が成り立ち、雇用が成立するという生産者と消費者としての協力関係が成立しうる可能性があります。
以上は即物的なものですが、両者の支え合いが必要だという議論には、当然生き方などの心理的、精神的、哲学的な点も指摘できます。
災害から与えられたヒント
特に、昨今の日本社会は都市部も地方も行き詰っていたといえます。都市部では、経済、コミュニティー、社会保障などそれぞれ見ても、決して晴れやかで先々に希望が持てるという状況ではありません。

地方においては、過疎と高齢化。どちらにしても新たなる考え方による街づくりが待たれていたところでした。今回の災害ではそれらのヒントとなるようないくつかの点が指摘です。
一つは、自然にはかなわないということ。今回特に原発事故に際して、想定外という言葉が頻繁に使われましたが、どんなに人間が考え準備してもそれを超える力を自然は持っているのです。だから、人間は生物の一部、自然の一部として自然と共生する知恵の中に生きていかねばならない、ということを改めて実感させられました。防浪ビルや高層都市といった発想から、離れることが求められています。
もう一つは、生きることのシンプルさです。極限に立って見ると、いかに今までの日常では瑣末なことに心悩ませていたかということを身にしみたという方が多いのではないでしょうか。生き方そのものの見直しも、なされるものと思います。
そして、眼前の街はがれきの山となり果て、なくなっても、伝統芸能などを通じ、郷土は心の中に、血の中に残るということを被災地で目の当たりにしました。ふるさとは、未だ人々の心の中に生きている。その地域のリズムが鳴り始めれば、自然と体が動く。心が湧き立つ。必ず、「再興なる!」という確信をそのことは持たせてくれるのです。
しかし、これらを特に学ぶべきは、実は都市部なのです。支え合いを通じ、これらを学び、行き詰っていた社会を、より良く変えていく必要があります。私が今回の復興に際して、単なる被災地である東北地方の復興ではなく、日本の復興だ、と言ってきたのはこの意味からです。
復興の担い手は誰か?
もう一つ、指摘をしたいのは、誰がこの過疎地、高齢化している地域の復興を担っていくのかという問題です。今残っている高齢者にそれを担えというのはさすがに酷です。
であるならば、これらの地域出身の現役世代、若い世代が各地域に戻り彼らの血の中に眠っている故郷を再興することが求められています。彼らの多くは都市部に出てきています。都市部と地方との協力の中で、故郷の危機に際し何かやりたいという人々の思いを結集する場が必要ではないでしょうか。
また、異質のものがぶつかれば、なにがしかの反応が出ます。都市部と地方とがふるさと再興、日本復興のもと、協力を進めていけば、新しいものが生まれます。文字通り、ゼロからのスタートです。新たなふるさとの創造です。都市部と地方とがスパークし、未知の世界が出現することへの期待。生み出すという創造の魅力。現場のみが持つ力強さ。ここには、希望があります。夢があります。生きがいがあります。ふるさと再興は、人生をかけられるだけの大仕事でもあるのです。
「顔が見える支援」が必要なワケ
今までいろいろ議論してきましたがこれらの前提として必要なのが、お互いの信頼関係です。
信頼関係があって、初めて本音の話ができます。ともに、仕事を進めることができます。人生をかけることもできます。また、金銭的支援にしてもより効果的に活用することができます。一次産品にしても、信頼関係があれば何も言わずとも安心して選ぶことができるのです。
しかし、これらは漠然とした地域同士ということで成り立つものではありません。最終的には、お互いの顔が見える関係としていろいろな経験をしていく中で、一つひとつ積み上げていくべきものです。決して逃げずにこの事業を進めていくんだと腹をくくった者同士が、試行錯誤していく中で築き上げていく関係が必要となります。顔の見える支援、これは絶対条件です。
そして、こういう関係を持つ地域が日本に数多くできて、全ての地域を面的にもカバーできるようになれば、それが理想といえるのではないでしょうか。それには、それだけ多くの人が必要です。思いを持っている人が、その最初の一歩を踏み出すための支援を行政には期待します。