社会保障と税の一体改革~「ワニのあご」をはずさないために

2012年02月01日

平成24年の通常国会が1月24日から始まりました。田中防衛大臣の失言や、議事録を全く作っていなかったという信じられない問題などで既に揺れている国会ですが、やはり何より大事なのは、「社会保障と税の一体改革」に関する議論だと思います。
1月24日に国際通貨基金(IMF)が「10%への増税では日本の財政再建には充分ではない」と指摘しました。一方、読売新聞の世論調査でも、63%の方が消費税は致し方ないと答えています。しかし、今の政府のやり方でいいか、となると一気に16%へと下がってしまいます。

■「ワニの口」の構造
どうしてもやり抜くという野田総理の発言には感服する一方で、「マニフェストの年金改革をすると仮定すれば17.1%への消費増税が必要になるので、当面は公表しない」とする行動にはチグハグさを感じます。
これが政治への不信につながり、新しい政策への不安につながっていきます。この課題は、こんなにチンケなものではなく、幅広くいろんな分野に影響するものだと考えます。
まず全体の収支を見れば、「ワニの口」の状態を変えなければいけないにもかかわらず、そのための議論や方策が全く出てきていません。
ワニの口とは、日本の歳出(ワニの上あご)と税収(下あご)の折れ線グラフの状態を言います。歳出は右肩上がり。税収は横バイ。ですから、年が経てば経つほど、不足分が増えていくのが“ワニの口”です。社会保障費だけでも毎年約1兆円ずつ費用が増加すると言われています。
消費税というのは、税収の折れ線の角度を上げるのではなく、この税収を横バイのまま上に押し上げるものです。その時は、増税分だけ差がなくなりますが、次の年からまた差が出始めます。毎年1兆円ずつ社会保障費がかさむのであれば、5%増加して12兆円税収増になっても、12年で今と同じ金額の不足を生じる結果に戻ってしまいます。これでは安定したとは言えません。
財政と社会保障が安定するためには、社会保障費を下げ、税収を上げていくことが必要になります。社会保障が必要な方々にとって最低限必要なサービスを、より少ない費用で効率良く提供していく制度が右肩上がりの線を抑えるのに必要で、また経済成長させる成長戦略が横バイの線を右肩上がりにさせるのに必要となります。

■一体改革の「一体」とは
開いていくワニの口を閉めるためのこれらの政策を一緒に提示していかないと、将来への不安は消えないと国民はそう感じているのではないでしょうか。
社会保障費の中で特に金額が大きいのは、年金、医療、介護なので、少なくともそれらは今後どう改革していくのか?ここには、大家族のあり方や地域社会の関わりあいなども今まで以上に大きな役割を占めるようになっていくだろうと思います。
一方で、デフレ克服のためにどういう政策を行うのか、円高対策として何をするのか、どういう分野を今後日本の主軸として育成していくのか、なども同時に示して初めて「一体改革」になります。
年金に関しては、今の自民党の方針とは異なりますが、私は基礎年金部分は税金でみていく方向しかないのではないかと感じています。現実的に制度移行をした時には、かなりの不公平が出る心配もありますが。
また、介護分野は医療と比べて制度としては「後発」です。ですから待遇にかなりの開きがでています。しかし、需要が一気に上ってきているのも事実で、何とかして頑張って大変な仕事をしている介護従事者の待遇は上げたいと感じています。

■改革の目標地点
そして、最も基本は日本人のあり方だとも思います。
先日、日本が貿易赤字国となったというニュースがありました。その中で、日本の製品の競争力が落ちているのでは?と懸念する内容が見受けられました。
まさしく国際競争の中で、勝ち残っていくバイタリティーと勢いを日本は持っていかねばなりません。
始めから誰かを頼りにするのではなく、自助、共助、公助の考え方で努力を続けていける国柄であることが大切ではないでしょうか。これは、単に社会保障という一つのテーマに留まらず日本の社会がこれからどうなっていくのか、外国と太刀打ちできるのか、私たちの孫、子のための望ましい国として残れるのか、の大変大きなテーマです。
まずは、政府・与党がその叩き台を提案することで与党の責を果たし、その案を実行すべきものにしていくという点で野党もしっかり協力し、議論を進ませることが今の日本の政治には必要だと思います。