「大地」を歩く(『ファイナンス』3月号)

2016年05月17日

「政治家と話している感覚だ」というのが財務省の政務を務めさせてもらう前までの財務省の職員の皆さんに対する印象でした。
国全体のことを考え、それぞれの省庁の政策を省庁の枠を超えて議論する。今回、税制改正大綱、予算編成作業を通じてその思いはより強くなりました。
ただ一つ、増税に対して前向きで意欲的な点は未だに違和感がありますが・・・。
財務省について、今のところの「驚きビッグ3」は、
1つ、深夜の送迎バス
2つ、副大臣の記者会見
そして最後は、考えてみれば当たり前だけど、私には盲点だった各省庁の政策の中身と予算が省内でわかる、ということでした。
特に、深夜の送迎バス。最終は何と、朝方の3時役所発。
今まで私もいろんな経験はしてきましたが、それらの経験を基にした私の常識を大いに超えており、大きな衝撃を受けました。
それだけの猛者が集まっているからこそ、今までの行政サービスをできる限り落とさずに、この時代が要請する新たな課題を押し込んでいくという大変難しい作業を担当できるのだろうと思います。
だって、終わりのない毎年続く作業です。
財政再建が求められている厳しい財政状況の中で、社会保障や災害対策などをはじめとする、社会が必要とする事業のための余地を作るためには、絶えず社会の変化や技術の進歩に目を向け続けることが求められます。
人口が減ることで何がいらなくなり、何が必要となるのか。
高齢化が進むことで何がどう変わり、何を新たに求められるのか。
そしてそれらを科学技術や新しい手法で、どこまでカバーできるのか。
膨大な知識と強力な人脈ネットワークとそれらを基礎に苦心して絞り出される知恵。
そして最後には、単なる議論だけに終わらせずに、政治を通じ法制化し、制度として着地させて社会を変えていく。
いやはや、感心します。
しかし、私も政務の仕事を拝命した以上、そのすごい組織の中でも何らかの役割を果たしていきたいと思います。
20年前、熊本県阿蘇郡蘇陽町(当時)で、配管工・設備屋の手下(てか)の仕事をしながら、3年間幣立神宮の境内に住んでいました。その時出会ったのが「雑魚は雑魚なりに大海を泳ぎ、我は我なりに大地を歩く」という坂村真民先生の言葉です。この言葉は社長のご自宅の部屋に、額に入れられ飾られていました。
フッと胸のみならず身体全体に染み入ってくるのを感じ、身体のド真ん中がスッと力強く真っすぐになったのを感じました。
どんなにすさまじい場所ではあっても、自分を見失わずに、自分に正直に為すべきことを為していけば、必ずや自分の居場所も役割も見えてくるのではないか。
今その思いを再び感じています。予算の年度内成立のために衆議院予算委員会に陪席し、財務金融委員会に出席するという、今為すべきことを今日もしながらその言葉をかみしめています。
そして今号が発行される頃には、平成28年度の予算案や必要な法案が無事に衆議院を通過していることを祈りつつ・・・。

『ファイナンス』(平成28年3月号)に寄稿

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※『ファイナンス』は予算・税制など財務省の施策に関する解説記事・関連資料等を掲載する月刊の政策広報誌です。