視察レポート)愛林館 ~地元学の実践拠点~

2009年12月30日

地元学とは、水俣の宮元さんという方が提唱している地域づくり活動です。まず、自分たちの足元をしっかりと見直そうということで、その地域に住んでいるお年寄りなどから聞き取りをするところから始めます。
生活に密着したことがらを、いろんな形で聞きながら、それを一枚の模造紙などにまとめてみます。この作業を続けていく中で本当の地域の独自性は何だろうか、という本質に近づいていくのです。

愛林館は、館長に同じ県内出身者ではありますが他地域出身の沢畑亨さんが就任して十数年。今は先の地元学の実践の場。森づくり、地域づくりの拠点として大きな役割を果たしています。
そして私が感じるのに、この沢畑館長の個性、感性が大いに自己主張していると思います。

この愛林館を特徴づけるものは、棚田とそれを可能にする石積み、そして森づくりです。
私も案内してもらいましたが、棚田の景色というのは、それはそれは美しいものです。
私が見たのはもう稲刈りも終ったあとでしたが、それでもこれだけ綺麗でした。これがしっかり稲穂をつけていたとしたら、もっと大きな感動があったかもしれません。よく日本の原風景と言われますが、まさしく心の奥で懐かしさを呼び起こす景色だと思います。

沢畑館長は、この愛林館のある熊本県水俣市久木野地区の一つの特徴として棚田を感じたのでした。
機会の使い勝手が悪い、つまり効率が悪いということで見捨てられていた棚田を復活させました。もちろん、用水路など灌漑の問題もありました。あぜも直しました。必要なところは石も積みました。そしてその中で、その石積みにも久木野地区の特徴があることに気付いたのです。

石は腐りません。手頃な石があればその辺の邪魔にならないところに置いておいて、必要なときに使えます。
ちなみに、沢畑館長に説明してもらったところでは、40年前からとっておいたものをついこの間使って積んだのがココ、と説明してもらいました。時間の感覚が都市部にすむ私たちと違います。
実は、この感覚もその地元ならではなのではないでしょうか。

そして今、館長は毎年、この石積み研修会を行っています。
ここの棚田は、すべて石積みで成り立っています。しかしその技術も途切れるかもしれません。そうすれば貴重な久木野地区の特徴がなくなってしまうかもしれません。地元である一つのアイデンティティーです。
それこそ1週間ほどの期間をかけて実際の現場で石を積んで法面をつくっていくのです。
技術の継承が、石積みの法面を増やし、その景色がその地域の原風景を維持していくことになるわけです。

模造紙いっぱいに書かれた、地元の方々のお話。そしてその内容を寄りわかりやすくするための写真。
ちなみにこれは、島根県の村での聞き書きで作ったもの。
子どもの頃、社会科見学などの後に、グループでこうしたものをまとめた経験、ありませんか?
こうしたまとめ方によって、見えてくるものが想像以上にたくさんあるんです。