視察レポート)岩手県葛巻町より 

2009年11月22日

岩手県の葛巻町に行ってきました。クリーンエネルギーの町で有名なところです。

特に風車の設置は、この町を大変有名にしました。これを皮切りに、木質バイオマスや太陽光など数多くの施設が町内にできてきました。私も多くを期待して寄らせてもらいました。

正直、訪れてよかったです。収穫もたくさんありました。同時に、軌道に乗せていくのはかなり難しいということも痛感しました。

「風車の町」の効用

まず目立つので風車です。最初に400Kw用のものを3本。次に1750Kw用の大きなものを12本建てたそうで、今15本が電気を生産しています。
これで有名になったのですから町が運営しているのか、と思ったら、Jパワーとエコパワーという会社が運営しているそうです。
なので作った電気を東北電力に売っても、町には収入が入ってこないそうです。

ではこの風車を作って町には何がいいんですか、と聞いたら、固定資産税が入ってくるという答えでした。その額、1年間に3000万円だということです。
しかしこれだけ固定資産税が入ると多少地方交付金の額が減らされてしまうそうで3000万円まるまるプラスにはなりません。
それでも、町を有名にした宣伝効果を考えると破格の効果です。
前町長に話を聞きましたが、「損をする可能性のあるクリーンエネルギー事業に、町としては安易に乗り出すわけにはいかない」ということで、民間に行ってもらっているそうです。

風車には、鳥が当って死んでしまう、バードストライクの問題や騒音、そして電磁波の影響と気をつけなければいけないことも多々あります。
実際、現場近くにも行ってみましたが、ブーン、ブーンと風を切る音をさせて回ります。何と先端は時速200Kmの速さで回るのです。そのスピードから鳥が逃げられるわけがありません。
しかし強い風を利用するには最適です。いろいろ考えさせられます。

ここで一つ前町長から要望がありました。今どんどん各地で風車ができ始めているが、各電力事業者の買取業務枠が決っていて風車を使って作った電力が余りはじめている、というのです。
以前は11円/Kwで買いとっていたところも今は入札で4円とか5円にまで下がるところも出てきている。これでは、事業が成り立たないので、もっと東北電力、東京電力に買いとってもらいたい、というのです。

自然エネルギーを一定枠買わねばならないという法律が(RPS法)できたのですが、今は裏を返して使われていて、その枠さえ購入すれば後は要らない、後は買わない、という図式になっているそうです。
風車で作られる電気はそれこそまさに”風頼み”で、一定ではないということで質が低いのは事実でしょう。しかしそれでも受け入れてもらわねば国全体の方向、クリーンエネルギーの方向には進まないのも事実です。
ですから今回菅副総理が”電力事業者の電気の買い取りを義務化しよう”と提案したのを聞いて、葛巻の前町長が吹き込んだのではないか、と思ったものでした。

葛巻町には風車の他にも、メタンガス発酵発電装置や、太陽光発電、木質バイオマス発電システムや、民間でも水車利用のそば屋さん、ペレットを製造している材木屋などがあり、それこそ”日本一”を彼らが名のるに値する自然エネルギーシステムを動員しています。

しかし、私は前町長さん、つまりこのクリーンエネルギー日本一の仕掛人の話を聞いていて「おやっ」と思ったことがありました。それが、木質バイオマス発電の話の時でした。

「クリーンエネルギーの町」への違和感

これは全国でも初めての木のチップをガス化してそれを燃料に発電するというものなのですが、初めてですから私も知りませんでした。ですから、チップをそのまま燃やすのか、と聞いたら、「そんなありふれたものに金が出るわけないでしょ」と切りかえされました。
私の違和感はここでした。その違和感は現実となっていました。

今、このシステムは動いていないのです。何故か、と言えば、”採算”が合わないからです。それも、今の原料チップの値段が半分になってやっとトントンということでした。
今1tあたり12,000円のチップ代が6,000円で仕入れることができてやっと1Kwh20円になるということでした。つまり、実験プラントで、実用化されていない。

一つは、この実用化されていないものが町の主要な施設として紹介されていることに違和感。もう一つは、町の名を売るための一つの手法としてクリーンエネルギーを使う割り切り方に違和感を覚えたと言えるでしょうか。
やはり、エネルギーを使ってエネルギーの自給を目指してもらいたい。そしてそこから私たちの文明に対して新たな道筋を示してもらいたい。新しい生活スタイルの提案や文化につなげてほしい。単に、目新しい技術をとりあげて終りにしてほしくない、という思いが湧き上がりました。

そして、もう一つ、これはどこでもその傾向があるのですが、電気至上主義となっているところです。
何でも電気にしたがる。しかし電気として利用するのはかなり効率からすると悪いと言わなければなりません。

風車、水車はそのまま動力として、またメタンガス発酵槽はメタンガスをそのまま燃料として考えることがより効率的です。
私自身は自然エネルギー利用のポイントの一つは、この電気化の方向性から脱却することにあるのではないかとも思っているのでその点まだ、物足りなさを感じるお話でもありました。

この葛巻の施設の中で、メタンガス発酵装置は私が29才の時に熊本・阿蘇に行った時作りたかったものの一つです。個人で作る方法があり、桑原さんという方が編み出したレンガ積みで作る発酵槽の作り方の本も当時買って熟読していました。

私はガスはそのまま煮炊きに使い、発酵後の液肥はトレンチという土壌浄化法の仕組みで自動的に畑に還元する方法を考えていました。この発酵槽の減量は、人糞と蓄糞の予定でそのためにも我が家では家畜を飼うことが想定されていたものでした。
今回、このプラントを目のあたりに見せてもらい、再び自分で作ってみたいという気になりました。

こういう思いをもって帰ってきた葛巻町ですが、町は町として新たな自然エネルギーの計画をも作っているようです。これはホームページに載せてありました。私が物足りなさを感じた広がりにも挑戦しているような中身に見えます。
どうせなら、こちらの説明をこそ聞きたかったと今更ながら残念に思いました。これも、行く前にホームページをチェックしておけばより深く聞いてくることができたのにですね。こういうことはわかっているつもりでもできないもので、次回はできる限り準備していきたいと思います。

それにしても くずまき高原牧場 はいいところでした。
牛乳もドロッとする牛乳を置いているし、チーズ、バターも始めたそうです。
シュクランハウスという一戸建ての宿泊施設、家族や10人ぐらいまでのグループで泊まるには最適の場所でもありました。食堂ももちろん牛肉をはじめとしておいしそうでしたし(私はちなみにお昼はハンバーグ定食でした)、焼肉用のバーベキュー施設もありました。
今度は、機会があれば家族で来たいものだなあと思いました。